神の創りし迷宮 打ち上げ 2
「カシム。俺たちはここまでだ!」
キースとオグマたちグラーダ兵は、ここで軍と合流して、色々報告したり、仕事があるらしい。
「お前の指揮で戦うという、俺たちの夢が1つ叶った!!」
オグマが嬉しそうに笑う。
「最後の活躍が見れなかったのが残念だが、さすがは我が弟だ!たいした戦果を残したな!」
キースはそう言うが、俺たち竜の団の評価は低い物になるはずだ。「ウンコの英雄」だしな。俺が止めを刺したのでは無く、歌う旅団か黒猫のザンが止めを刺した事になるだろう。
少なくとも、ギルドの方ではそう判断している。
それに、その方が俺的には有り難い。
「兄さんたちが来てくれなかったら、きっと俺たち全員死んでいたよ。ありがとう」
俺は兄たちと握手をして別れる。
グラーダ軍の包囲を抜けると、おびただしい魔物の死体があり、それを運んで焼却の作業にあたっている兵士たちと遭遇した。
大変な重労働だ。お疲れ様です。
後で知ったが、この日のグラーダ軍の戦闘は、驚異的な結果だった。全体で6万5千の兵力でダンジョンを包囲していた。
あふれ出た魔物は恐らく5千程。その内、野営地を襲った魔物は100に満たない。
それでも、2千近くの冒険者たちで対処して、撃退するのに苦戦した。単純な数で言えば20倍の戦力で勝利を収めるのに必死だった。
そう考えると、グラーダ軍に向かって行った魔物は10万を越える戦力で迎え撃つべき相手だった。
だが、広い空間での集団戦闘となると、グラーダ軍は凄まじい強さだった事が証明された。
魔物は全滅。一匹の漏れも無く殲滅した。
対して、グラーダ軍の被害は、負傷者20名。内、重傷者は4名。それも、すでに魔法でほぼ回復している。
そして、死者0人。
援軍が到着したときには、すでに戦闘は終了していたそうだ。
なので、今、魔物の後片付けをしているのは、援軍に来た軍団だった。
やはり、グラーダの軍隊は強かった事がこれで証明された。
だが、祖父に闘神王の話を色々聞いた後では、ここまでの流れが、全てあの希代の名君の手のひらの上だった気もする。
その結果を聞いたアルフレアのリーダーのリードは、「良い面の皮だ」と、苦虫を噛みつぶしたような表情だったそうだ。
そんなこんなで、休み休み進んで、真夜中にデナンの町に到着する。
デナンの町では、先に連絡が行っていたので、受け入れ体勢はバッチリだった。ギルドが各冒険者たちに宿泊先を手配していて、速やかに宿に入る事が出来た。
俺たちは、部屋に入るなり、ベッドに倒れ込んで泥のように眠った。
◇ ◇
翌日は、多分朝から準備が始まっていて、昼前には祝勝会の大打ち上げ祭が始まった。
町をあげてのお祭りとなり、ギルドが奮発して、食べ物、飲み物も山ほど用意された。
俺たちは、ゆっくり起きて、風呂に入ってから、町に繰り出した。装備は外して、楽な恰好をする。
そして10時頃に、全員揃って冒険者ギルド支部に向かう。
ステイタス鑑定だ。
12時になり、ギルド主催の祝勝会が始まった。
町の広場を中心とした、大通り全体に、祝勝会の会場が設けられた。
広場や大通りには、今回の緊急クエストに参加した冒険者たちがごった返していた。
テーブルや椅子が、広場、通りに所狭しと並べられ、舞台も整えられて、思い思いに腰掛けて、料理を食べたり、酒を飲んだりしている。
そこで今回の緊急クエストの論功行賞が行われる。つまり、誰が手柄を立てたのかを表彰するのである。
ギルド職員の代表として、前線支部を指揮していた男性が舞台上で声を張り上げる。
それによると、こうなった。
勲功第1。
「アカツキ」、「黒猫」のメンバーである。
まず、アカツキだが、ダンジョン内で前線を率いて戦い、ダンジョンコアを破壊する事に成功する。そして、地上の防衛戦の指揮を取り、非戦闘員の死者を出さなかった事。
黒猫も、同様の手柄と、あと、魔王との戦いでのザンの功績が大きかった事が挙げられた。
勲功第2。
「アルフレア」。
これも前線での戦いと、魔王戦での活躍が認められた事による。
勲功第3。
「正義の翼」。「歌う旅団」。
正義の翼はダンジョンでの奮戦ぶりが評価されている。
歌う旅団に関しては賛否有った。最終局面で現れて、魔王を足止めはしたものの、他の冒険者を危険に陥れる攻撃があったことは非難された。その為に第3である。
勲功第4に、ランダたちが一時的に組んだパーティーと他に2パーティー挙げられた。これは、前線で戦い続けた事や、魔王戦でも参加し、活躍した事による。
勲功第5が、「竜の団」である。
竜の団は前線での戦いは最後の局面だけで、直接的には大型魔物を倒した訳では無いし、魔王戦でも、毒霧を無効化した意外は、活躍していないと見なされたからである。ただ、一時的に前線のレイド指揮を取った事と、魔王戦での活躍を他の冒険者が訴えた事によって、一応表彰する形となった。
それについて、アカツキやアルフレア、正義の翼のメンバーは、竜の団の評価が間違っていると憤慨していた。
そして、各々の活躍によっての報酬等が発表されていく。
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