神の創りし迷宮  猫耳記者登場! 2

 俺は警戒する。情報屋だとしたら、いちいち金をせびってくるし、しつこい。そのくせ、情報を小出しにしてくる厄介な連中である。

 考古学者をしていた頃は、それでもかなり情報屋を使って、遺跡の情報を探っていた。

「そんニャに警戒しなくって良いニャー!」

 なんで語尾が「ニャー」だ?

「あんたは?」

 俺は尚も警戒しつつ尋ねる。顔にも「うさんくさい奴だ」と言う思いははっきり出ていただろう。

「アタシはギルドから依頼された『ただいま冒険中』の記者ニャ。竜の団皆さんに密着取材、お願いしますのニャ!」

「『ただ中』?ああ。そうだった・・・・・・」

 忘れていた。デナンで待機させてるって、グラーダのギルド長が言っていたな。それにしても、さすがプロだ。速攻で俺たちの事がわかったな。まあ、エルフの子どもを連れていると目立つよな。

「マジでやるんだ?密着取材?」

 ファーンが頭の後ろで手を組んで言う。

「もっちろんニャ!今、一致番話題の竜の団!偉業に対して、その内情は全くの謎!わかっているのは、ペンダートンの秘密兵器と、アメルで人気だった歌姫リラ・バーグ。それと、ハイエルフの子ども。そんなぐらいですニャ!」

「あれ?オレは?」

 ファーンが言うと、ネコ獣人のニャーニャー娘がファーンを指さす。

「謎ですニャ!!」

「謎かよ?!」

 ファーンが苦笑する。

「ミル、目立っちゃう?」

 ミルが不安そうに俺を見る。俺があまり目立ちたがらない事を知っているので、気にしたようだ。

「大丈夫だ。ミルが気にする事じゃないよ」

 俺が言うと、ミルは安心した様にため息を付く。


「それで、あなたは?」

 リラさんが尋ねる。

「ああ!申し遅れましたニャ!アタシはパイドン・ユリーカと申しますニャ!ユリーカと呼んで欲しいのニャ!」

 俺は肩をすくめて仲間を見回す。

「だそうだ・・・・・・」

 仲間たちも、同じく肩をすくめる。


 ユリーカは、ゴトゴトと他のテーブルから椅子を引きずってきて、ちゃっかり同じテーブルを囲む。

「で、密着取材って、具体的に何するんだ?」

 俺は尋ねる。「パイドン」の割に、ちっとも「パイドン」じゃないと、最初に思ったが、センス・シアじゃないので黙っている。

「はい!そのまま、密着させて頂きますニャ!」

「ずっと?」

 ミルが尋ねる。

「ああ。宿は別々ですのでご安心を。ただ、出発の時間を知らせておいてもらえれば、ちゃんと合流するので、冒険が始まったらずっと一緒に行動するので、よろしくお願いしますニャ!」

「でも、オレたちダンジョンに行くぜ?」

 ファーンが同じ姿勢のまま言う。

「心配無用ですニャ。こう見えてもアタシは元冒険者でレベル30の盗賊職でしたニャ!避けて、逃げて、逃げまくるのは得意ですニャ!皆さんの活躍の邪魔はいたしませんニャ!」

 うわ。俺たちよりレベル高いぞ・・・・・・。

 俺たちは不安そうに顔を見合わせて、苦笑する。

「あ、あのさ。期待させて悪いんだけど、俺たちって、メチャクチャレベル低いよ・・・・・・」

 ガッカリさせるなら最初が肝心だ。徐々に失望されると、結構厳しい。

「?本当ですニャ?」

 疑ってる、疑ってる。


 俺は冒険者証を出す。

 レベル1

 力、体力、俊敏性、器用さ、運。オール100。一般人男性の基本数値だ。魔力100、魔力適性、潜在性は空白。

 一瞬、俺の冒険者証のステイタスを見たユリーカは、丸い目を更にまん丸にしたが、すぐに吹き出す。


「ご冗談を!これ、まんま初期値じゃニャいですか?!カシムンは、ステイタス鑑定してニャいですニャ?」

 バレバレだが、どうせ鑑定しても、たいした事が無いだろう。魔剣たちに総スカンを食った男だからな。

「ほれよ」

 ファーンが冒険者証をテーブルにポンと置く。そう言えば仲間の冒険者証を見るのは初めてだ。


 ファーンの冒険者証を、俺は手に持ってマジマジと眺めた。そして、盛大に吹き出してしまった。

「お前!念写の顔、思いっきり半目状態じゃ無いか!?」

 その言葉にリラさんもミルも俺の手元をのぞき込んで、一様に吹き出す。

「ばか!?見るところそこじゃねーだろうが?!完全に油断してたんだよ!!笑うな!!」

 ファーンが真っ赤になる。

 まあ、確かにそこじゃ無い。どれどれ?


 レベル3。マジで3だな。

 力98、体力124、俊敏性140,器用さ113、運67、魔力0か。平均値では無いが、一般人レベルのステイタスだ。ちょっと足が速い位だな。

 魔力適性は当然空欄。

 潜在性・・・・・・「SS」!!!???

 なにこれ?

「え?潜在性、『SS』?!」

 リラさんが驚愕に目を見張る。ユリーカも同じく目をまん丸にしている。

「SSなんて、アタシ初めて見たニャ!!どうニャってるんですか?」

「どうもこうも無いだろ?探究者だからに決まってるだろ?あとスキルの『洞察眼』もな。このくらいでなきゃ、探究者にはなれないの」

 ファーンは当たり前の様な顔で言うが、探究者って何だよ?!ずっと疑問だわ。


 驚き冷め止まぬうちに、怖ず怖ずとリラさんが冒険者証を俺に渡す。

 リラさんの念写は、少し緊張したような表情で、これまた可愛い。

 レベル11。

 力133、体力168、俊敏性145、器用さ167、運143。なるほど。

 そして、魔力は257で突き抜けている。当然魔力適性は「風」。

 そして、潜在性がA。これまた驚きの値だが、SSをみた後である。とは言え、魔力の高さと、潜在性は、精霊使いとなる可能性があったからだと言う事になるのかな?となると、今ステイタス更新したら、どうなるのか見てみたい。

 スキルが「楽器演奏」と「歌唱」。


「じゃあ、あたしのもね!!」

 ミルが冒険者証を俺に手渡す。

「うわ!これズッルゥ!!」

 のぞき込んだファーンがすぐに叫ぶ。

 ミルの奴、ちゃっかり念写でポーズを決めている。明るく笑ってウインクまでしている。ぱっと見可愛い。


 レベル13。絶対今はもっと高いな。

 力73、体力377!?ああ、ハイエルフだから体力メチャクチャあるんだよな。焦った。

 俊敏性195、器用さ178、運109。体力以外は盗賊っぽいが、運が109は心許ない。まあ、これは鍛えて上がる者でも無いが。

 魔力348!!さすがハイエルフだ!もう、魔法使いになっちゃえよ!

 魔力適性「火」は意外だな。潜在性「S」。これは高いのだが、ハイエルフだからな・・・・・・。

 で、盗賊スキル持ちね。


「・・・・・・」

 うわー!俺の仲間たちの「潜在性」が、みんな化け物クラスだ!!これで俺の潜在性が空欄だったらどうしよう?大抵の冒険者は、潜在性は空欄なんだぞ?!

 ああああああ~~~。余計にステイタス鑑定を受けたくなくなる。

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