王城 グラーダ狂王戦争 6
世界会議終了後、捕虜とされていた各国の王族や、代表者などは、解放される事となった。
ほとんどの者が、元通り、支配者として自分の国に戻ったが(何と路銀をグラーダ国から支給されていた)、中にはグラーダ国に残ったり、姿をくらました者もいた。後継者が指名されていない国は、一時的にグラーダから代官が派遣されて、その国の新しい支配者が決まるまでの内政を行った。結果的に、混乱期にグラーダ主導で内政をとって貰っていた国は安定が早かったのは皮肉な話しだ。
世界会議が終わり、各国への対応が一段落して、国内も落ち着いた後、ようやくグラーダ三世は、何年も待ち望んでいた、アメリアとの結婚を果たす事が出来た。
アメリアは出会った時にはすでに病弱で、長生きは出来ないと言われていた。だから、グラーダ三世は、結婚が間に合うか不安だったという。だが、それからアクシスが誕生するまでの10年間は、2人にとっては幸せな時間だったと言える。
そして、3952年。7月20日。
アクシス・レーセ・グラーダ王女が誕生し、同時にアメリア・マレン・レーセ王妃が命を落とす。享年29歳。グラーダ三世が30歳の時の事である。
◇ ◇
これが、祖父が話したグラーダ狂王戦争、いや世界会議戦争の真実であった。
全ては「聖魔大戦」に向けての布石だったのだ。
なんてとんでもない王なのだろうか。俺とは比較にならない重圧と、それに耐える使命感を持って生きているのだろうか。
曇りのない目で見れば、心から尊敬する。
このまま、「狂王」と呼ばれ続けるのは、あまりにも無念である。だからこそ、聖魔大戦を勝利しなければならない。
幸いにも、ここにはリラさんがいる。吟遊詩人のリラさんなら、この詩を、世界中で歌い上げてくれる事だろう。
気がつくと、俺も、リラさんも、ファーンも、ミルも、涙を流していた。深い感動に包まれたのだろう。そして、家族たちも滂沱の涙を流しているが、これは珍しい事じゃない。
「じいちゃん。俺、強くなるよ!」
そう言うと、祖父は嬉しそうに笑う。
「でも、中々強くなれなくて・・・・・・不甲斐なくてごめん」
俺が呟く。実は魔剣も認めてくれないダメダメ加減だったのに、流石にショックを感じている。
「まあ、カシムも大概弱いよな」
ファーンが笑う。
「でも、そこもカシム君らしくて、私は好きよ・・・・・・。あ、いや、その、そう言う意味では!!」
リラさんが真っ赤になって弁解する。いいですよ、弁解しなくても。まあ、「弱さ」が「らしさ」ってのは、ちょっとアレだけど。
「でも、お兄ちゃんなら、どんな事があっても絶対大丈夫だもんね!黒竜に食べられても生きてたしね!!」
ミルが慰める。だが、その言葉にオグマ兄さんが目を剥く。
「カ、カシム!!それは本当か!?黒竜に食べられただとぉ!!しかもそれで無事だっただと!?」
オグマ兄さんが俺の肩を掴んでがっくんがっくん揺らして叫ぶ。
「それで生きてるなんて、お前はやっぱりすごい奴だ!!!弱いなんてとんでもない!!!俺より遥かに強い男だぁぁぁ!!!」
熱い。熱っ苦しいよ兄さん・・・・・・。
俺は思わずため息を付く。
「全く、『強い』って何なんだよ・・・・・・」
その言葉を聞いた仲間たちが、呆れた顔でため息を付いた。ファーンだけではなく、リラさんもミルも、首まで振っている。
「これだよ、これ。コイツがそれについて語るとかって」
「本当に自覚がない人は困りますね・・・・・・」
「何でこんなに鈍いかなぁ~~」
なんだよ、こいつら?
「おい、カシム!!今度はお前の話を聞かせろ!!聞きたい事は山ほどあるんだ!!キースの分も聞いておいてやるから全部聞かせろ!!今夜は寝かさないぞー----!!」
変な意味に聞こえるからやめてくれ。
「あ、そうそう。じいちゃん。忘れないうちに伝言があるんだけど、白竜と、黒竜が会いに来ないって文句言ってたよ。早い内に会いに行ってあげてよ」
俺がそう言うと、祖父までため息を付く。
「その台詞が、物のついでに言えるカシムが、自分を『弱い』と言う辺り、精神の修行が足りぬと見えるな」
「鍛えてやって下さいよ!ジーン様!!」
ファーンが騒ぐ。
そして、その日は深夜になっても、中々話しが終わらず、家族と仲間とで盛り上がった。
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