黒き暴君の島 ギフト 1
話を終え、食事も終えた俺とコッコは、ソファーに2人座り、白竜が食器を下げると、ついでに、またお茶を入れてくると言いキッチンに行く。
俺は創世竜を使っているようで恐縮するが、実は白竜にも普通の家があり、そこでよく自炊しているのだそうだ。
「のう、カシム」
黒竜が体の向きを変えると、ニヤリと笑い、小声で俺に話してくる。ちょっと嫌な予感がする。
「おぬし、白竜にドラゴンドロップをもらっておるの?」
黒竜が俺のウエストバッグを指さす。
結局誰もドラゴンドロップを管理してくれなかったので、止むを得ずウエストバッグに入れていたのだ。実に雑な扱いで白竜には申し訳ないと思っている。
「ああ。もらったよ」
「フフフ」
黒竜が不敵な笑みを浮かべる。
「知っておったよ。ワシものう、おぬしにドラゴンドロップをやろうと思っておったのじゃが、すでに白竜にもらっておるのに、同じのをやるのはシャクじゃ。そこで、おぬしのためだけのドラゴンドロップを昨夜作ったのじゃ。それをおぬしにやろう」
「え?それってどういう・・・・・・」
黒竜が言いながら、顔と右手を俺の顔に近づけてくるので、俺は上体をできる限り反らして距離を取ろうとする。だが、ソファーでは逃れようが無い。
「動くなよ・・・・・・」
そう言うと、黒竜の手が素早く動き、俺の右目に指を突き入れて、右目の義眼をえぐり抜く。
鈍い痛みが走り、俺は小さなうめき声を上げる。
「コッコ!何をする?!」
黒竜は、えぐり取った俺の義眼を無造作に放り投げてから、空中に手を踊らせる。すると、黒竜の腕が空中に消える。
よく見ると、腕の切り口の空間に揺らぎが生じている。その揺らぎから手を引き抜くと、黒竜の手は元のまま、どこも切れたりしていない。そして、その手には赤い球体が乗っていた。よく見ると眼球のようだ。
「これはな、ドラゴンドロップでワシが作り上げたおぬしのためだけの眼じゃ。ワシらの力の一部が使える様になる代物じゃ。便利じゃぞ~。クックックッ。白竜には内緒じゃ・・・・・・」
そう言うと、その赤い眼球を、俺の右目に近づけてくる。
嫌な予感しかしない。
「や、やめてくれ・・・・・・」
俺が呻くが、黒竜は自信満々な表情で、俺の頭をグイッと押さえると、無造作に眼球を俺の右目に押しつける。赤い眼球はあっけなく俺の右目に収まってしまう。思ったより抵抗感が無い。
「どうじゃ?痛くなかったじゃろ?」
黒竜が、俺から離れてウキウキした様子で、俺の周りを飛び跳ねる。腕をワキワキ動かしたりして、期待に満ちた表情だ。
「ほれ、目を開けてみい!その眼を使ってみい!」
「ええ?あ、ああ」
言われるがまま、目を開けようとするが、やっぱり俺の右目は自力では開けない。神経だかがやられて、開く事が出来ないと言われた気がする。
「開かないな・・・・・・」
何とかまぶたに力を入れようとするが、ピクピクはするが、目が開くことは無い。
「なんでじゃ?仕方がないのう」
黒竜が俺の右目のまぶたを、手で無理矢理開ける。
「ほれ。これで見えるじゃろう?」
しかし、左目を閉じると、ただ真っ暗になるだけで、右目が何か光を捉えるようなことは無い。
「いや。見えないな・・・・・・」
左目を開くと、黒竜の顔が近い。俺が素直に報告すると、黒竜はムキになって、俺の右目に顔を更に近付ける。
「そんなはずないのじゃ!!その右目はすごい右目なんじゃぞ!絶対にワシが見えるはずじゃ!!」
ひそひそ声で叫ぶ。
「でも見えないぞ」
「この眼はな!普通に視力も与えてくれるが、それだけじゃ無い!時空を越えて、おぬしが愛する人を見たり、時空を開いて、好きな時に会いに行くことが出来る眼なんじゃ!おぬし、ワシを愛しているのじゃろう?!」
黒竜の言葉に、俺は「なんでそんな使えそうもない機能の眼を俺にくれたんだ?」という正直な感想を持った。どうせくれるなら、なんで、もっと冒険者的な、しかも、これから他の創世竜に会いに行くのだから、その時に役に立つような機能を持たせてくれなかったんだと思わざるを得ない。
そもそも、「時空を越えて」ってのがよく分からない。多分凄い能力なのだろうが、愛する人を見たり、会いに行く専用とかって、何の意味があるんだ?
それに黒竜は根本的に色々思い違いをしている。
「あのさ。俺が愛しているのはコッコであって、黒竜じゃない」
「じゃからワシを愛しておるのじゃろ?」
黒竜がコッコの姿で首を傾げる。
「もちろん黒竜とコッコが同じだと言うことはわかっているから、当然黒竜も愛してはいるが、ちょっと複雑なんだよ。それに、『愛してる』といっても、『妹』としてだ」
ついでに胸も大きめの方が好きだと言いたい。
「なん・・・・・・じゃと?・・・・・・ちょっと、何言っておるのかわからないのじゃ」
黒竜が、黒い目をグルグル回して混乱している。
「そもそも、俺はまだ、特定の誰かを女性として愛してはいない。初恋もまだだぞ」
恥ずかしながら、男世界で生きてきた俺にとって、女の人が近くにいるだけで、ドキドキしてしまい、まだまだ恋など出来そうもない。そういった事に憧れてはいるが、それがどういうものか、まだよく分からないのだ。
リラさんの事は凄く好きだし、はっきり言ってズバリ好みのタイプだが、それで、恋愛の対象としてみられるかと言えば、また別の話だ。
パーティーの仲間として大切に思うし、リラさんも俺にとてもよくしてくれるが、それは仲間だからだろう。そうした事を、俺への好意と捉えられるほどうぬぼれてはいない。
好かれたいとは思っているが、幻滅させる事ばかりしてる気がするしな・・・・・・。
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