緑ヶ丘梨乃 4

「いいけど、その代わり条件があるの。それが私があなたの前の現れた理由」

 私の殺してほしい、という願いに、あっさりと答えるついさっき出会ったばかりの不思議な女性。

 条件? 

 死ねるのなら、どんなものでも構わない。どんなことでもやるし、その自信がある。

「千代田香恋っていう女の子を殺してほしいの」

 千代田……。どこかで聞いた覚えがある名字。

「それができたらあなたを殺してあげるわ」

 どうせ自分は死ぬんだ。私の気持ちは揺るがない。人っ子一人殺せないほど、私は弱い人間じゃない。

「わかりました。それで、どんな人なんですか」

 香織さんはポケットから手帳を取り出し、そこから一枚の写真を抜き出す。

「この子なんだけど」

 見せてくれた写真には黄色い帽子を被る幼稚園児くらいの可愛らしい少女がいた。五、六歳くらいだろうか。

「こんな小さい子を殺せと……?」

「あら、了承したんじゃないの?」

「うっ」

 息がつまる。まさかこんな小さい女の子だったとは思わなかったからだ。

「冗談よ」

「え?」

「ほら、右下に年月日が書かれてあるでしょ? この写真は十年前のなの」

 ほんとだ。ってことはこの子は今中学三年生ということになるのか。

「この子、私の娘なの」

「えっ?」

 私の反応に、香織さんは微笑んでいる。何がおかしなことをしたつもりはないけど・・・。

「ほら、よく写真見なさいな」

 そう言われ、もう一度写真に目を移す。

 肩まで伸びた金髪は綺麗で、眩しすぎる笑顔を引き立たせている。きっと、友達が多く、男の子たちからモテモテなのだろう。大きなライトブラウンの瞳に吸い込まれそうになる。本当に可愛いい女の子だ。

 なるほど。よくわかった。

「ね? 私に似て美人でしょ?」

 我が子を自慢する香織さんは、普通のお母さんだ。

「髪色以外はよくに似てますね」

「私の旦那がハーフでね。この子はクォーター」

 でもどうして自分の娘を殺せなんて……。

「あの、この子……。香恋さんは千代田って名字何ですよね。そしたら香織さんの名字は千代田ですよね。名前しか伺っていなかったので気になっていました」

 私の発言に、香織さんはまた窓の方を見る。この行動を取る時の香織さんは決まって悲しい目をしていて、

「ううん。私の名字は全然違うの」

「えっと、それはつまりどういう……?」

 悲しい目がより一層強くなっている。これ以上聞くのは良くないと思ったが、いいのよ、と言って香織さんは口を開く。目にはうっすらと涙が見えた。

「勘当、とは言わないか。言うならば絶縁。見切りをつけられたのよね」

 小さい女の子がそんなことするだろうか……。香織さんが虐待を働くような人には見えない。その理由が皆目見当つかない。

「それのわけって、わかってるんですか?」

 恐る恐る聞いた。

 もう、香織さんが殺せと言った理由を聞かずに殺す気は私の中から消えていたのだ。

「過保護すぎたのかなぁ。買い物に行った時にね、香恋が迷子になったのよ。私が香恋の母親でいれたのはその時が最後」

「あの、よくわからないんですけど・・・」

「あはは、まぁ、無理もないか。香恋はなんでも自分の想い通りにする力があるの。あなたと同じで特殊」

 ありえないような話だが、私と同じと言われれば納得せざるお得ない。

「探し回って、お店の中で香恋のことは見つけた。けれどもう遅かった。私が声をかけたら、隣にいた男の子の腕を掴んで逃げていったわ。この人誰、と言ってね」

 これまでの話が本当なら、親にとってこれ以上に辛い話はないだろう。

 その証拠に、香織さんは潤んだ目から一粒だけ涙を流す。

「どういうわけか、その男の子がえらく気に入ったみたいでね。恋でもしたのかな。今はその男の子の妹として普通に生活しているわ。もちろん、その家族と周りは初めからいたと認識している。香恋の力はそれくらいすごいのよ。事実を変えちゃうんだから」

 正直、よくわからない点がほとんどだが、とりあえずは理解した。香恋という女の子について。

「あの子が幸せなら、親としては問題ないんだけどね」

 そうですね と言いかけてやめた。

親になったことのない私に何がわかるのだ、と自分に言い聞かせて。

「私がいわゆる魔術や魔法を扱えるって話はしたでしょ。だからその力を使って特殊な力を持ってしまった人を監視とか管理しているの。例えば、緑ヶ丘梨乃さん。あなたもね」

「すみません。急で良くわからなくて」

「あはは、いいのよ完璧に理解しなくて。それでね、千代田香恋の力は最も危ないの。自分の思った通りにできるってね。地球を滅亡させることだってできる。本当は保護してその力を抑え込みたいんだけど、私じゃきっとそれは無理。昔接触したときにね、誰、とは言われたけど、絶対に私のことは知っている。────きっと見逃してくれたのよね。本人は事実を変えたことを記憶している。合わせて、変える前のこともね。そこで私が彼女の前に現れたとする。想ったこと通りにする力があるのなら、私が近寄れば殺される可能性があるの。死んで欲しいと思われれば死んでしまう。だから私が香恋に近づくことは難しいの。下手に近づいたら殺されちゃうから。母親の私でも、あの子ならありえる。そこでなんだけど、近くことができず、保護できない。そもそも近づけば殺される可能性がある。この状況を打破できる人物は、もうお分かりかな」

 淡々と話す香織さんにもう涙はない。とっくに覚悟はできるんだ。

「私」

 そう、これが真実。

 私の唯一の救いの道。

「死んでも生き返るあなたなら、香恋を殺せるかもしれない」

 よくわかった。

 でも一つだけ疑問がある。これを解決しとかないと意味がない。

「香織さんは、そんな私を殺せるんですか」

「私の言う保護っていうのはね、人の能力を消すことなの。だから事が終わったらその生き返る力を消してあげるわ。そのあとは好きにしなさい。また、屋上から飛び降りてもいいし」

「わかりました。ところで、どうして彼女の力は消さなかったんですか?」 

 香織さんなら、その力にいち早く気づいてどうにかできたはずだ。

 私の質問に、香織さんは笑顔で、

「だって嬉しかったんだもん。娘が私と同じで特殊だーって。それも見た事ないようなすごい力。親として鼻が高くなっちゃったのよ」

 本当に嬉しそうな顔で話す香織さんは、正真正銘の母親だった。




香織さんが帰ったあと、今後の作戦を立てることにした。

 まずは件の少女を探さなければならない。

 香織さんは居場所については、自分で探してみなさい、と言って特に言及してくれなかった。

「千代田香恋……」

 千代田、という名字には聞き覚えがあった。

 でも、一体どこで?

 何か行動しないと始まらない。まずは手始めに小中の卒業アルバムでもみてみよう。

 自室のクローゼットを開ける。確かどこかのダンボールにしまっておいたはずだ。

「あった」

 意外にもすんなり見つかった。彼女もこれくらい簡単に見つかればいいな、と淡い期待を持ちながら卒業アルバムを開く。まずは小学校からだ。

 自分のクラスと隣のクラスの顔写真と名前が載ったページを見たが、千代田という名字の人物はいなかった。続いて中学校のも見たが、こちらも同じ結果に終わった。

 それからインターネットで、千代田とまで打って検索するのをやめた。この聞き覚えは学校でのものだと確信しているからだ。芸能人やスポーツ選手等の有名人ではない。

「そうだ、入学式の日に配られたプリント!」

 この聞き覚えの正体は、この前入学したばかりの高校でのもの。今後は通うつもりなどなかった学校。その可能性が高い。

 カバンを開け、クリアファイルを開く。

 取り出したのは、入学式の日に担任が全員に配ったクラスメイトの名前が載ったもの。次の学校の日までにみんなの名前覚えてこいよ、と若い男の先生は言っていた。その言葉を聞いて、よりこのプリントに目を通す気など失せていた。

 だけど。

 どうして想った通りにいかないのかな、私は。

 探しているのはなんでも想った通りになる少女。

 少し可笑しくなりながら思う。

 ──なんて、皮肉。

「千代田康太」

 そこに千代田香恋の名前はなかった。

 あったのは同じ名字の男の子の名前。

 そもそも、香織さんの話では彼女は年下。ここに載っているはずがない。

 しかし、そこで香織さんとの会話を思い出す。

 ──妹として普通に生活している。

 つまり、千代田康太というクラスメイトは彼女の兄なのかもしれない。

「学校に行く理由ができたみたい」

 また可笑しくなる。二度と行くつもりなんてなかったのに。

 寝よう。明日は学校だ。そう思い立って、部屋の明かりを消す。

 まだ眠くない。

 だけど、私は眠る。だって、早く明日がきて欲しいから。

 まだ、彼が彼女の兄と決まったわけではない。

 だから、早くこの命題の答えを導きたいのだ。




 私と同じで、誰ともコミュニケーションを取らず、常に机に突っ伏している彼こそが、千代田康太だった。なんと、隣の席だった。

「……………」

 このことが判明して二週間。つまり入学してから二週間ということになるわけなのだが……。

どうして一度も話しかけてこないの!

私は完全に苛立っていた。彼に。

入学してから数日、私はいろんな人に話しかけられた。

クラスのイケイケ男子。イケメンと名高い先輩など。この学校のほとんどの男子は私の興味を示し、絡んできた。もちろん、誰とも付き合う気はないし友達も不要としている私には鬱陶しいとしか思えなかった。どうせ死ぬ。人との関わりなんて無意味なのだから。

だけど彼は。隣の席だというのに。一度も。

「はぁ」

 思わずため息を出してしまう。授業中を除き、学校で口を開いたのなんていつぶりだろうか。

 もう、話しかけてくる男子はいなくなったからだ。緑ヶ丘梨乃はコミュニケーションを取る気がないと、学校中に広まったのだろう。

 私のため息も、一日のすべての授業が終わり、開放感に溢れ、ザワザワとした教室では誰にも聞こえていないはずだ。

 今日も失敗か。もう、違う方法を模索したほうが早いんじゃないかと思い始めてしまうぐらいまで、私は焦っていた。

もはや何の焦りなのかわからない。いや、これは焦りではくモヤモヤした感じ。

そこで、隣からイスを引く音がした。カバンを背負い、出入り口の方へと足を向ける。そのまま誰かと話すことなく彼は教室を出ていってしまう。

 私は彼を追った。




 校門を出て数分歩いたところに彼の家はあった。

 登下校でいつも通っていた道で、見慣れていた一軒家。

 このままこの辺にいれば、彼女に会えるのでは、と思ったがやめた。どう考えても不審者だし、同じ高校の生徒がたくさん通って行くからだ。

 寄り道せずに家に帰り、制服のままベッドに倒れこんだ。

 薄暗い部屋で、真っ白な天井を眺めていると、インターホンがなった。

 私の家を訪ねてくる人は一人しかいない。

 階段を降りて玄関に向かった。鍵を外し、ドアを開けると、香織さんはいつも通りの笑顔で立っていた。

「どちら様ですか、もなしに開けるなんて不用心だね。謎のセールスマンとか受信料の取り立てだったりしたらどうするのよ」

「追い返す自信がありますし、うちは受信料も払ってますので」

 香織さんは靴を脱ぐと、まるで自分の家のように図々しく居間へと歩き出す。

 実は今日で来るのが七回目で、あの日以来、定期的に訪れてくる。

「ココアよろしく!」

 私は普段ココアを飲まない。香織さんのために用意するようになった。

「で、今日は何の用で?」

 作ったココアが入ったマグカップを香織さんに渡し、香織さんの対面にあるソファへと腰を下ろす。

「ん? なんだと思う?」

 別に大した用なんかないのはわかっている。ただ雑談しにくるだけ。前回は、宝くじ一万円当たった、という自慢をしにきた。

「香織さんって、暇なんですか?」

「失礼ね! ちゃんと仕事もしてるんだから」

 大人というのは、基本的には夕方まで働いているイメージがある。もちろん職業によって就業時間は違ってくるのだが、平日のまだ明るい時間帯からうろちょろしている大人は、何してるんだろう、と疑問に思ってしまう。

「今日たまたま見かけたんだけどさ」

「? はい」

 香織さんは不敵な笑み浮かべている。

 嫌な予感がする。

 この顔をするときは決まって私をからかうのだ。

「康太君のことストーカーしてたでしょ」

「してません」

 食い気味で答えた。何を言われるのか予測できていたからだ。

「ストーカーしてたのは香織さんの方でしょ」

「まぁね。我が娘の顔を見るためよ。それに、私がどこにいたかなんてわかんないくせに」

 彼女に見つからないために、絶対にバレないところにいるのだろう。

「本当にストーカーしてないの?」

「だから、してませんって。どうして私が」

「隣の席になって二週間。それに学年一の美少女。普通の男子なら迷うことなく話しかけているはずよね」

 彼女の兄かもしれない男の子が、同じクラスにいることは話していた。作戦についても。最善にして唯一の手段がこれだった。

「香恋の兄であるかもしれない千代田康太と親しくなる。そうすれば妹である香恋に会える可能性が出てくる。そこまで行けば何らかのアクションを起こせる。良い作戦だと思ったのになー」

 今の状況だと、千代田君が彼女の兄なのかというのは不鮮明である。

 だから早く確かめたいわけなのだが。

「頑張って話しかけなさい」

「それだけは無理です」

 意地になっていた。話しかけたら負け、という謎理論を唱えてしまうくらいには。

 私の性格を理解してくれているのか、香織さんはそれ以上は言ってこない。

「絶対に話しかけられるような状況を作るというか、私に興味を持ってもらう方法を考える方がいいのかな」

 …………………。

 そんなもの簡単には思いつかない。

 しかし、香織さんには何か策があるようだった。

「ちょっと試してみる価値があるかも」

「? 何ですか?」

「彼に絶対に興味を持ってもらう方法よ。不発に終わるかもしれないし、うまくいくかもしれない。何かリスクがあるとすれば、あなたに負担がかかる」

 何だろう。話しかける以外の方法なのだろうけど。

「彼の前で死になさい」

 香織さんはキリッとした声でそれを発した。

 彼の前で死ぬ。それにどんな意味があるのか。私が死んだという事実は人の記憶から忘却されるというのに。

「いくら死にたい気持ちがあっても、死ねないんだったら無駄なことはしたくありません。ドMじゃありませんし」

「それがさ、結構うまくいくと思うんだー」

「どうしてですか? 香織さん以外の人は忘れるんですよね?」

 香織さんはマグカップに口をつけ、ココアを一口飲むと、見慣れたドヤ顔をする。この表情をするときは決まって語り出すのだ。

「どんなものにも抜け穴がある。いや、抜け道? まぁ同じか。あなたのその力にだって、何かあると思うのよね。例えば、香恋は想った通りに世界を変えることができる。あなたに死んで欲しいと想ったらあなたは死ね。だけど、あなたは死んでも生き返るからその想いは叶ったとは言えない。だから私はあなたに香恋のことを依頼した。これはこの前話したことだったね。このように、何かがあるのよ。香恋ほどの力を持ってしても、緑ヶ丘梨乃は殺せないようにね。だからあなたの力もきっと抜け穴が存在する。緑ヶ丘梨乃の力は死んでも生き返る、そしてそのことを誰もが忘れ、普段通りとなる。この忘却の部分に、抜け穴があると私は予想しているの。ある条件を満たせば、忘れない。みたいなね」

 長く喋って疲れたのか、香織さんは上に両腕を伸ばしてあくびをする。

 香織さんの話からすると、もし忘れていなかったら私に興味を持つと。

 昨日死んだはずの人間が、隣の席にいる。そして周りは一切、動揺した様子を見せず、自分だけが不思議な世界に迷い込んでしまう。そうなれば、いくら彼でも私に話しかけてくるだろうということだ。

 そのある条件が満たされれば、うまくいくことは間違いない。私が逆の立場でも話しかけるだろうし。

 そうなってくると、今最も重要なのはその条件ということになってくる。もちろん私には見当がつかない。だけどきっと香織さんならわかっているはず!

「で、その条件というのは……?」

「わかんない!」

「は⁈」

 思わず大声で突っ込んでしまう。話の流れ的に、これは予想していなかった。

「そんなの、わかるはずないじゃない。でもね、私が何も考えなしで喋っていたなんてことあるわけないでしょ? ちゃんと考えてあるわ。何事も試してみないとわからないじゃない」

「は、はぁ」

 やはりこの人はよくわからない人で。不思議で、謎。だけど、そんな香織さんに惹かれる自分がいる。親しみやすくて面白いというのは私にないものだから。

「ここから話すのはあくまで可能性。不発に終わるかもしれない。だけど、きっと成功すると私は思ってるから。ちゃんと聞いてね」

「はい」

「昔ね、こんな人がいたの。簡潔に話すと、能力を行使しているところを他人に見られて忘却が発動しなかったってことがね。香恋の力がすごい理由はここにもあってね。想う瞬間を他人は認識できないでしょう? だから彼女は最強なの。ちょっと話がそれたね。この法則があなたにも適用されるのなら忘却が発動せず、彼はさっき話した状況になる、というわけなの。頭がいいあなたなら、もう理解できたよね?」

 今の話の真偽はどうであれ、試してみる価値は大いにある。

 つまりはこういうことだ。

「───私が彼の目の前で死ぬ」

「大正解っ」

 香織さんはダブルピースが飾られた可愛らしい笑顔をしている。初めて会った日から思っていたがこの人はサイコパスというものではないだろうか。つまりは私に死んでみてと言っているからだ。まぁ、私が言えた立場ではないが・・・。

「じゃ、次に考えるることが見えたね。どのようにして彼の目の前で死ぬか。うん、これがなかなか難しい」

 絶対楽しんでいるなこの人・・・。

 もしこれで、私の力が消失したのなら本当に死ぬのに。それならそれで私は大歓迎だけども。

「彼を呼び出して、目の前で刃物を自分に刺す、とか」

「んー、それじゃインパクトがないよね。実はこれってあなたが考えている以上に難しいことなの。自分の心臓を刺して、即死させるのなんて難しいことよ。死ぬその瞬間を見せなきゃいけないんだから。それだと、救急車とか呼ばれてその瞬間を見るのはお医者さんとか看護師っていう事態になる可能性だってあるわ。今回の条件は彼の目の前で死ぬこと。これってもっと厳密に言えば、彼の目の前で即死すること。たとえ自分の心臓を自ら確実に穿つことができたとしても、普通の人間なら目を瞑ってしまうわ。そんな痛々しいところ、みていられないもの。そうなっちゃうと、通常通りに忘却が発動することになる」

 どうやら私の意見は簡単に却下されたみたいだ。

 いくら私でも、それをする瞬間に躊躇ってしまうだろうし、高いところから飛び降りる方が何倍も楽だ。

それならと、この意見もぶつけてみるが、

「面白くないからヤダ」

 なんて言われてしまった。何度も同じ死に方をして飽きないの? というおまけ付きで。

「私に完璧な案があるの」

 やっぱり、香織さんは面白い人だ。

 うん。きっとこの人に従っていればうまくいく。

 これが、あの日彼の家で起こった事故の真実。

 私が彼と話すようになる以前の話。

 どうしてこうなったのかと、少し前のことを思い出しながら、ぎこちない顔を浮かべる二人が映ったプリクラを大事なところにしまった。

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