千代田康太 8

「おはよう」

 俺の家の前に一人の美少女。

「お、おう」

 目を合わせるのが気まずくて、鍵をかけながら答える。

 どうして昨日の今日で俺の家の前で待ってるんだ⁈ 気まずいとかそんな感情ないの⁈

「き、今日も天気いいな」

 ここは困った時のお天気トークで場をつなぐ。それにしても緑ヶ丘の行動の意味が全くわからない。

「どうしたんだ?」

「学校、行きましょ?」

 学校から近い俺の家の前には同じ学校の生徒がよく通る。つまりこのことは同じ学校のやつに見られているのだ。美少女が朝迎えに来ていた。男子なら喜ばしいイベントかもしれないが、今の状況的にそんなことはない。

 だって緑ヶ丘さん、あなた昨日怒って帰りましたよね?

「どうかしたの? 忘れ物でも思い出した?」

 見たこともない笑顔で話す学校一の美少女。なんか怖い。

「い、いや、その」

「ん?」

「学校、行こうか……」

「そうね」

 横にぴったりくっつく緑ヶ丘。昨日とは大違いだ。昨日地雷踏んだせいでおかしくなったのか?

「あの、一つ聞いていいかな」

「何かしら?」

 周りの視線が痛い・・・。はたから見たら完全にカップルだ。

「怒ってない?」

「? どうして?」

 どうやら怒ってはいないみたいだ。

「私からも一つ、お願いがあるんだけど、いいかな?」

「お、おう」

「今日も家、行っていいかな?」

 そう耳に囁いてきて、緑ヶ丘は、

「先に行ってるね」

と言い残し、行ってしまう。

 昨日までとはまるで別人。一体あの後何が・・・。

 周りのざわつきに動揺しながら、俺は教室を目指した。

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