千代田康太 5
「あ、お兄ちゃんおかえり」
「ああ」
家に帰ると、妹がいる。あんな光景を見た後だとそれが幸せなことなんだと痛感する。
もしあそこで緑ヶ丘が助けていなければあの男の子の家族はみんな大変悲しむことになっていたわけだ。まだ真実を聞かされたわけじゃないが、彼女は何度も死んで、人を助けているのかもしれない。ただ、彼女にも家族がいて、次の日には何事もなかったかのようになっているとしても、一度でも人を悲しませているわけだ。
「そんなの、おかしいだろ」
「お兄ちゃん、何言ってんの?」
声に出してしまっていたみたいだ。
「気にすんな。ところで宿題はやったのか?」
「今日は宿題なんかないよ。ってか、帰ってくるの遅かったね。どこか寄って来たの? お土産は?」
「ちょっと街までな。お土産なんかねーよ」
「あ、街行ってたんだ。もしかして事故見たりした?」
やっぱり、もうニュースになってるのか。
「見てない。確か中央公園らへんで起きたんだっけ?」
別に嘘をつく必要はなかったかもしれないが疲れていたため何となくそう答えた。二日連続で人が死んだ話をするのは気が引けるし。
「名前と写真出てたけど、お兄ちゃんと同じ高校見たいだね。結構可愛いじゃん」
「しかも同じクラスだったりするぞ」
「へー、でも私の方が可愛い」
それも昨日聞いたことだ。
「はいはい。俺もう今日は疲れたから寝るわ」
「あ、そう。ご飯は?」
「いらない。母さんにも伝えといてくれよ」
「はーい」
俺は自室に戻り、ベッドに横たわる。
「早く明日になってくれないかな」
柄にもなく、そんなことを呟いて、眠りに落ちた。明日は緑ヶ丘に真実を聞く。そんな一日になるはずだ。
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