千代田康太 1

「今朝、緑ヶ丘さんが交通事故のため亡くなった。まだ出会って間もなかったと思うが、少しでもクラスメイトだったわけだ。忘れないでいてほしい。これでHRを終わる」

 担任が話を終えると、もちろん教室がざわつく。

GWが明けて、まだ二日目の朝に突然クラスメイトが死んだ。

入学してまだ一ヶ月とはいえ、クラスメイトの突然の死は高校一年生であるところの俺たちにはあまりにも現実として受け入れがたい事実なのだろう。

彼女は一年生ながら校内一の美人と言われていた有名人で男子からの人気はとても高かった。しかし、友達といるところなど見たことがなく、いつも席で読書しているという印象が強い。

 友達作りは苦手だったのかな。まぁ俺も今絶賛ぼっち生活送ってますけど……。

 校内で一番の美人が死んだというニュースは瞬く間に学校中に広がり、どこもかしこもその話題で持ちきりだった。そしてあっという間に帰りのHRが始まっていた。

「みんな、くれぐれも事故には気をつけるように。それと千代田君は終わったら先生のところへきてください。今日は解散。さようなら」

 クラスメイトたちは「さよなら」と適当に言い、続々と教室を出て行く。部活やバイトに放課後の活動は人それぞれだ。

「千代田君って実は不良なのかな?」

 名前の知らないクラスメイトの声。きっと彼女は俺の物語のモブキャラってところだ。気にしない気にしない。

「なんか事故現場が千代田君の家の目の前なんて噂もあるぞ?」

「あ、それで呼ばれたのかな」

 あの、そういう話は聞こえないようにしてもらえるかな? 学校において誰かが呼び出されたらその理由が気になって話したりするのは良くあることだけどね……。ってか俺の家の前が事故現場って噂やばすぎでしょ。どこから立ったの? 友達いないから俺の家知ってる人なんていないはずだけど。これで熱心な俺のファンが家きたりしたらどうすんのさ!

 クラスメイトが8割ほど教室を出て行ったことを確認し、俺は教卓にて俺を待つ先生のところに出向く。

「康太、お前今日の授業ほとんど寝てたみたいだな」

「昨日夜中までゲームしてたんですよ」

 担任の富沢先生は二人の時は名前で呼んでくる。

 俺が中一の時の家庭教師だったたからで、当時からフレンドリーに話しかけてくれて、人見知りの俺が心を開いている数少ない内の一人だ。担任を持つのは初めてというまだまだ新米教師だがとても信頼している。たぶん、富沢先生じゃなかったら俺まだ学校で一度も口開いてないと思う。まぁ、口を開いたのは富沢先生とのおしゃべりを除くと自己紹介の時と消しゴム落として前の席の陽キャサッカー部の、名前は忘れたけどそいつに拾ってもらって「ありがとう」って言った時だけだな。めっちゃ声小さくなっちゃって「何?」って聞き返されたが笑ってごまかしました。

「まさか康太の家の前で事故が起こるなんてな」

「ちょうど家を出た瞬間でした」

「それはなかなか見たくはないものを見てしまったな……。新聞記者とかテレビ局の人から取材したいって言われてる。応接室まで行ってもらっていいか?」

 予想はまさに的中していた。なにせ救急車を呼んだのは俺なわけだし、取材の一つや二つ来るんじゃないかとは思っていた。

「わかりました。先生も行くんですか?」

「俺はバレー部の練習を見ないとならん。一人で行ってこい」

 そうして俺は緊張するなと背中を強めに押され(物理的に)応接室に行き、約二時間にも及ぶ取材を受け、やっと放課後を迎えて帰路に着いた。

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