第2話 本当だよ。

 あれから一ヶ月、真衣とは何にも話してもいない。僕が話しかけようとすると避けられるのだ。それもそのはず、告白を受け取ったものの断り、僕のために努力したのにも関わらず昔の真衣の方が好きだ。と言ってしまったんだから。

何も後悔していない訳ではない。もうちょっと言い方が有ったかもしれない。

でも、少し後悔してても言って良かったとも思っている。あいつを変えたのは僕だから。結局、僕はこれからどうすればいいんだろう。真衣と一切関わらないようにするか、積極的に何か一つでも話せるように努力するか…うん。何か話せるように努力しよう。

      ●○●○●○

 そう考えていた次の日の放課後、僕は一つ上の先輩、新本飛鳥先輩に呼び出された。告白の定番中の定番、屋上に…今じゃ屋上を解放している学校は少ないが秋桜は屋上を解放しているのだ。新本先輩はこの学校で真衣よりも人気がある人だ。そんな人が僕になんのようだ?と屋上へ向かった。そして、屋上のドアを開けた。

「あ、朝くん」

そこにはもう、新本先輩が居た。初対面のはずなのにいきなり、朝くん呼びだ。

「初めまして。新本先輩ですよね」

新本先輩は秋桜のアイドルだから知っているもののそう言う。

「新本飛鳥ではあるけど初対面じゃない」

「えっ」

僕が新本先輩と会ったことがある!?

「驚くことも無理ないよね。実は私も朝くんの幼馴染み。小学生低学年までいっつも遊んでた。三人で。今日は真衣ちゃんに相談されてねぇ」

「先輩と幼馴染み!?しかも真衣が相談?」

驚くことばかりだ。

「私は朝くんと同じ理由でこっちまで引っ越したんだよね。私はちゃんと毎年帰ってたから今でも真衣ちゃんと仲、いいの」

「僕は帰りたいけど帰ったら親父が…」

こんな話したくない。

「ごめん。辛いもんね」

先輩は素直に謝る。

「で、本題。知ってると思うけど真衣ちゃんは朝くんの事、好きなの。何で傷つけたの?」

「傷つけた…か…。今も可愛いけど元々の真衣じゃない。僕のことを好きにならなければもっと元々の真衣の真だったのに」

「でも、後悔はしてないみたいよ。あんなに可愛く綺麗になれたんだもん。女の子は綺麗になれたら嬉しいよ。皆に可愛いって言われるのは嬉しいことなんだよ。(経験者)一番言われたかった人には傷つけられたみたいだけど」

確かにそうかもしれない。

「真衣ちゃんは今でも朝くんの事が好きなんだよ」

嫌われた訳ではないのか…

先輩はフッと少し微笑むと

「実はね、私も朝くんの事好きなんだ。今言うことじゃないかもしれないけど」

え!?本当に驚くことばかりだ。

「な、何言ってるんですか。秋桜の超絶美少女と秋桜のアイドルが僕の事好きだなんてあり得ないじゃないですか」

僕は落ち着いてそう言う。しかし、先輩は俺に近づき

「本当だよ。何なら今、誰も居ないからキス、する?」

と上目遣いでそう言った。

追い討ちやばい。

「いや、そうなると真衣はだめで何で先輩はいいのかってなりますから…」

「私は朝くんのために綺麗になった訳じゃないから。私将来、女優になりたいの。だから」

先輩だと将来っていうか歩いてたらスカウトされそうだけど。

先輩はそれを悟ったように言った。

「スカウトされたことあるけど断ってる。オーディションで実力で女優になりたいの」

スカウトも自分で綺麗になったから実力と言えるんでは?詳しいこと知らないけども。

「だからキス、する?」

「い…や…えっーと」

どうしようか迷っていると先輩は顔を近づけてくる。その時、屋上のドアが開いた。

「飛鳥ちゃーんどこ?……えっ?」

真衣だ。先輩を探していたのだろう。

「あ、真衣ちゃん…ごめん」

「抜け駆けだめって言ったじゃん。しかも、私朝くんに嫌われてるんだし」

二人共、お互いが僕の事好きなのをしっていたんだな。恥ずかしい。

 そして、嫌ってる訳じゃない。そう言おうとしたら

「朝くんは嫌ってないよ。真衣ちゃんの事、可愛いって言ってたし」

と先輩がそう言う。すると、真衣の顔が赤くなる。

「そして、部屋が隣。これ私より有利じゃない?」

「確かに。今日から猛アタックする!」

気持ちは変わらないと思うが。

先輩が僕達二人に言いたいことがあるという。

「真衣ちゃんごめんね。朝くんのもう一つの隣の部屋空いてたでしょ」

「は、はい」

こ、これはもしかして…

「私、そこに独り暮らしするから。よろしく」

真衣はそれを聞くと床に手と膝をついた。

「終わった…」

「手続き終わったから週末には引っ越すね」

「えーーーーーーーー!!」





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