楽屋インタビュー

――お疲れ様でした


魔王:おつかれっすー、おつかれっすー


――年に一度の奉納漫才、ご自身的にはいかがでしたでしょうか?


魔王:そうですねー、まぁ良い意味でいつも通りですかね

   こんなん言うとアレですけど……


――何でしょうか?


魔王:んー、僕らってその場で何か知らん二人がバーって喋って、

   聞いてみたら何かおもろいやんけ

   そんな雰囲気で漫才やるていう想いがあるんですけどね


――はい


魔王:そういう意味で台本ほん作りとかネタ合わせやとか、

   あんまりお客さんに意識させたぁないってのがあるんスわ


――ええ


魔王:そういう意味で言うべきか迷ったんスけど、

   今日の相方はノっててアドリブも結構出たなぁと


――なるほど、全てがその場限りの面白い会話というテイで

  漫才をされている魔王さんからすると、

  アドリブという単語は出しにくかった訳ですね


魔王:そーなんですわ

   ただまぁネタは僕が作ってるとか、

   相方が次のセリフ飛ばしてフリーズしたとか、

   しょっちゅう色んな場所で話してますからね

   まぁ今さらっスけどw


――お二人はこの世界の神に対する奉納だけでなく、

  今や色んな場所で漫才をされていますよね

  かなりお忙しいんじゃないですか?


魔王:忙しいは忙しいですけどね、まぁ楽しいからね

   昔は魔王と勇者言うたら切った張ったの関係でね

   出会ったら最後、どっちかが死ぬのが当たり前やった

   それが今はどつきどつかれの関係ですわ

   平和が一番ですー


――確か先ほどの漫才で、魔王さんは不死身だと仰ってましたよね

  それでも勇者は魔王を殺す事が出来るのですか


魔王:……まぁそれが勇者言うもんですからなー

   時代が違えばそういう事になってたかも知らんね


――漫才中は聖剣で斬られた身体がウネウネしていましたが、

  ガチの戦いであればあんなものでは済まされないと?


魔王:いやいやいや、済むとか済まんとかちゃいますやん

   戦うような事にはならないじゃないですか


――戦わなくてホッとしている、そんな表情をされていますが


魔王:ホッとしてるというか、まぁ平和が一番ですよね

   みんなが笑顔で暮らせるって大事な事ですね


――つまり、時代が時代であれば魔王さんは死んでいたと、

  そういう事ですか?


魔王:そんなん一言も言うてませんやん!

   そら本気でやったら分かりませんけどね?

   どっちかが生き残るか、それとも二人とも死ぬか

   本気の本気でやり合ったら世界も無事では済まんと思うけどね!


――なるほど、それだけ当代の勇者は強いと

  とても敵に回したくない強大な存在であると、

  そういう事でしょうか



魔王:お前ええ加減にせぇよ!

   ナンボお前が教会の司祭や言うてもいてまうぞボケ!

   俺怒らせてお前に何か得があんのかゴラァ!!


――いえ、少し気になったもので

  それで、先ほどの漫才で聖女さんは勇者さんと結ばれるべきと

  勇者さんも仰ってたと思うのですが


魔王:はぁ!?

   お前俺が言うた事全部聞いてへんかったんか!?

   あれはネタや、俺が書いてる台本ほん

   勇者あいつが覚えてセリフとして言うてんねや!

   あれは勇者の本心やないねん!

   分かるやろ普通!


――と言う事は、魔王さんは勇者さんにあえてあのセリフを

  言わせているという事になりますよね?

  これって寝取らさせってヤツですか?


魔王:よっしゃ分かった、お前表出ろ跡形もなく消し飛ばしたるわ



――勇者さん相手には無理でも私如きであれば消し飛ばす事が可能だと、

  つまりそういう事でしょうか


魔王:消し飛ばすんはヤメじゃ

   まずはこの左手からこま切れにしたるわ

   俺を怒らせた事後悔しながら逝きさらせ!



ガチャ、テッテレー



勇者:魔王魔王、これこれ


魔王:あ゛ぁ゛ぁ゛!?

   ……何やそのプラカード、ドッキリ?


勇者:そうそう、大成功♪


魔王:ええっ!?

   ほなこの司祭、俺をわざと怒らせようとしてたって事け!?


勇者:そうでーす

   魔法で司祭の脳内に直接指示出してましたー


魔王:マジかよはずっ!

   あんなんで怒るくらい小さい奴や思われるやん……


勇者:まぁ小さいんは確かやししゃぁーないな


魔王:うわぁ……、これどっかで流されんの?


司祭:はい、また放送日時オンエア決まったらお知らせします


魔王:マジかー、これ見たら絶対嫁にどつかれるやん……


勇者:その時間に家で受信水晶テレビ見られんようにデートでも連れてけよ


魔王:勘が鋭いからそういう時に限って行かへん言われるねんもん


勇者:あー


司祭:勇者さん、この記録用水晶カメラに向かって締めて頂けますか?


勇者:せやったせやった

   魔王はインタビュワーに失礼な事を言われると、

   本気になって滅茶苦茶怒ります!

   これからインタビューされる方、

   気を付けて下さいねー!

   以上、世界平和ラフ&ピースでしたー


司祭:はいオッケーでーす

   (本当に殺されると思った……)


勇者:自分顔真っ白やなwww


司祭:もうこんなお仕事しないようにします


勇者:それにしてもノリノリやったねぇー

   指示出してない事もバンバン言うてたし

   見掛けによらず結構命知らずやなぁ


魔王:それホンマけぇ、おぉっ?


司祭:ちょっ!?

   全部勇者さんの指示じゃないですか!


勇者:特に聖女ちゃんのくだりとかヤバかったなぁー

   何や、寝取らさせってパワーワード

   そんな言葉初めて聞いたわ


魔王:お前マジでちゃんと二人っきりで話しよか


司祭:違うんですよ魔王さん!

   私は勇者さんの指示に従っただけなんですよ!


勇者:勇者を魔王に差し出す司祭とか怖いわー


魔王:お前若い癖に死に急ぐタイプなんやな

   お前みたいな奴は常に死を覚悟してなアカンで

   ……分かってるよなぁ!!?


司祭:ひぃぃぃっ!?


勇者:テッテレー


魔王:逆ドッキリでしたー


司祭:へぇっ!?

   かかか、勘弁して下さいよぉぉぉ!!


勇者・魔王:ハッハッハッハッ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る