第23話 12月22日 水曜日 朝
述希がいつものように出勤すると、一番先に会ったのは白雪さんだった。思わず
「一日位休んでも大丈夫ですよ」
と、言ってしまったら
「気遣い、有り難う。でも、祝日前に日常を味わいたくて」
と、言われてしまった。そうだろう。白雪さんには帰る場所があって良かったと思う。
「追い出すみたいで、ごめんなさいね」
と辛そうに言うので、思い切って打ち明ける。
「実は、この間話した元取引先で欠員が出て、宮迫さんと出向いたらその場で採用が決まりました」
「まぁ、宮迫さん凄いわ。この近くで嬉しい!」
「はい、皆さんと離れるのは寂しいですが」
「お別れじゃないですよ、ノンキさん!」
フィジーさんの声がした。
「そうだよ、ノンキ。いつでも遊びに来い」
ポッポさんも言ってくれた。
「はい。有り難うございます。後で、皆さんの好物を教えて下さいね」
「お〜ぃ。朝礼やるぞ!」
「は〜ぃ!」
ドンさんの号令に皆が答えるいつもの朝が嬉しくて、仕事にも熱が入る。白雪さんも、いなかった間の変化を熱心に聞きメモを取った。
いつの間にか説明し終えてしまったので、ラスさんに許可を取って午後から開成へ行くことになった。修理に出す車が無いので、マッチさんが運転手を買って出た。車内で、愚か者を歌ってくれた。両手はハンドルなので、声だけの近藤真彦の真似。逆に新鮮だ。歌い終わって
「誰のことを言っていたか、分かるよね?」
と聞くので、白雪さんも述希も思い切りうなづいた。マッチさん流の優しさが染みた。白雪さんの元勤め先の人達は、自分のことをどう思っているのだろう?いつか、分かる日はくるだろうか?
開成の棚を開けたら、白雪さんが歓声を上げた。部品と書類とに分けた案を気に入ってくれた。一緒に考えたブンブさんにもお礼を言わなければ。別れる前に、白雪さんの満面の笑みが見られて良かった。
帰りは同じメンバーだったが、ノンキが運転した。皆でエトランゼを合唱して、スッキリした。そうさ、おまえのせいじゃない。
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