第2話  5月8日 土曜日 正午頃

 「誕生日おめでとう、緑。お疲れ様でした」

と言って、述希は親友と水で乾杯した。大型連休中ずっと2人の姪っ子の遊び相手をしていた友は、無事大役を果たして満面の笑みだ。

陽の当たり具合もあるだろうが、緑の黒髪。この時期にも本人の容姿にも合った、良い名前だなぁと思う。

「どういたしまして。仕事は決まりそう?」

「うん。明後日から山北の自動車整備場」

「えっ、早いね。やっぱり優秀なんだわ」

「いやいや。私小さい子の世話出来ないし」

「姉の子だから楽だったよ。可愛いし」

とにこやかに言って、写真を見せてくれた。スマート・フォンの画面に、波とたわむれる5才と3才の水着姿。地元の見慣れた海のはずなのに、まるでリゾートのように見える。

「本当に可愛いね。有り難う」

緑がだって私と血がつながっているしねと言いたげにブラウスの丸襟を直していると、料理が運ばれて来た。述希がこっそり頼んだ特別メニューだ。緑の歓声が収まってから、2人でゆっくり食べた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る