第3話 雨女
雨女として新たな日常を過ごしていくこと一ヶ月。
その日は休日だった。
友達と一緒に遊びに行き、それなりに楽しんだ後の帰り道。私は帰路の関係上、一人で知っている道を歩いていた。
元々人気のなかったのにコロナでさらに静まり返った道。その道を歩いている時に、どこかからか視線を感じた。
その視線の方向を見ると、怪しい存在がつけていることが分かった。
ふと人攫いのイメージが湧く。きっと私が雨女で特別な存在だから拐おうとしているんだ。そう思った途端、体が震え出した。その視線が消えることを信じて早歩きで帰路に向かう。
前から怪しい巨漢の男が立つ。きっと怪しい男の仲間だろう。
すぐさま道を変える。いつの間にか早歩きからジョギングへと変わり、全速力の走りになっていた。
所々、待ち伏せる怪しい男ども。それを避けるように進むといつしか知らない道をひたすらに走っていた。そうして着いた先は、誰もいなさそうな人気のない廃工場。
死ぬ。殺される。犯される。
不安が不安を呼ぶ。帰り道には怪しい男達がぞろぞろと集まってきていた。ただ、彼らはみな少しおどけたような表情だった。
「助けて……くれ。お前が俺らに捕まれば俺らは助かるんだ。だから、捕まってくれ。頼む」
心底悲痛な声を響かせている。
何が起きているのかは分からない。けど、彼の言う通りに捕まれば後は散々な目に合うことは分かる。
廃工場の方へと走ろうとしてふと気づく。私の馬鹿。結局廃工場の方へと逃げても逃げ場なんてない。つまり袋の中のねずみだ。
「『火魔かま・地火日壁じかにちへき』一度退場して頂こうか」
唐突に現れる謎の男。彼が繰り出したと思われる炎が地面から吹き出し、廃工場を囲む壁となって現れた。
道端に現れた怪しい男どもは炎が邪魔で来られない。
私と一人の男のみが炎の壁の中に取り残された。
高身長で整った顔。イケメンの類だ。無口そうな見た目と落ち着いた口調。傍から見て悪い企みを考えているように見えない真面目な雰囲気。第一印象は彼は悪い奴ではない、だった。
それと、特徴的なマスクをしている。黒色のナイロン製マスク。表面には口にも見える炎柄の模様が書かれてある。私の持つマスクと似たような雰囲気があった。
「アンタが「雨女」と言われているマスク所持者か」
私はつられて首を縦に振った。
彼は納得したように頷いた。
「そうか。それではこの町に雨を降らせ、そして町を混乱させてるのはアンタの仕業だな。仕方ないが、捕縛されて貰おうか。抗うなら……殺すまでだ」
私は彼らに狙われた。
突然手に入れたマスクによって雨女となり、その力で雨を降らせていたら町を混乱させたとして見知らぬ者達に狙われた。そして、なすがままに非日常へと巻き込まれていく。
Mask call HoLE マスカルホーレ ふるなる @nal198
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