うつ病じゃねえよ!!

 最近SNSを開くたびに、私は心でため息をつく。


『○○さんがフォロワーになりました:

 うつ病歴3年、精神障碍者手帳3級から最近2級。病気を克服するためマインドフルネスやカウンセリングに通って頑張っています――』

『○○さんがフォロワーになりました:

 うつ病/HSP/不眠症/精神障碍者手帳2級/障害年金2級/断薬/精神医学/SSRI/デパス/薬害/――』

『○○さんがフォロワーになりました:

 うつ病ですが在宅ビジネスで月10万稼いでいます!皆さんに僕のノウハウをお教えして、世の中をもっとよくしたい――』


 ごめん。

 確かに私は、うつ状態の愚痴を書く。対策も書く。うつを乗り越えて生きる考え方もよく書き込む。

 でもね、うつ病じゃないんだ。

 落ち込むことも多いし、寝込むことも多いけれど、辛いのは同じだけど……

「私は双極性障害なんだぁぁぁぁ!」

 まったく違う病気なんです。薬だって別なんです。


 病気は比べるものではないのだけれど、それでも無理矢理比べるとしたら、双極症はうつ病よりも重い。

 うつ病は完治しやすいが、双極性障害は基本的に一生治らない。

 うつ病は気分や体力が下に落ち込むだけだが、双極性障害は逆に上がりすぎて困ることになる。高慢になったり、人によっては犯罪に走ることもある(本人の意思ではないのがポイント)。

 うつ病は落ち込んだ状態を周囲に分かってもらえるが、双極性障害は上がっている状態の良い面ばかり認知され、期待に潰されがち。


 自殺率はうつ病とほぼ同じ(一般と比べうつ病は20倍、双極性障害は22倍)だけど、脳と肉体の乱高下が人生を終えるまで続くという点で、双極性障害ってのは非常にキツい。

 社会的失敗の数も、転職の回数も、失った友人の数も家族と縁を切った/切られた人の人数も、他を圧倒して高いと思う。


 我思う。

 この人生、マジでハードモード。


 そんなわけで、自覚ある双極性障害の人たちは色々工夫している。

 私は同じ双極性障害患者の集まりに参加しているんだけど、多くの方が正しい情報を察知する能力に特化していると感じる。生活改善に取り組んでいる人も多く、プロアスリートレベルで生活リズムを細かく刻んだり、薬膳や漢方を勉強していたりと、向上心が高い。自分の体調を分析するため、睡眠時間や運動量を毎日デジタル機器で記録する人も多い(実は私もやっている)。


「自分の努力と工夫で、絶対に社会に残ってやる」という気概が強いのが、自覚ある双極性障害患者の方だと思う。

 そんな人が、ラン〇ーズでの稼ぎ方だの辛いので構ってくださいだのという記事に反応するわけがない。


 うつ病仲間が欲しくてフォローしてるなら、もうその行為はやめろって言いたい。うつってね、移るんですよ。もし仲のいい人が現れても、お互いに引っ張り合いになるから健全な人と交流してください。的確なアドバイスをくれる人もいるでしょうが、甘えが過ぎればその人はあなたを切り捨てます。SNSではなく、医者や自立支援施設を頼りましょう。施設はマジでおススメ。

 副業のお誘いは、本当に要らない。やり方のハウツーもいらない。てか思考の鈍った人間に怪しい知識を売りつけるとか詐欺でしょ。――健全な人にも言っておきますけど、稼ぎ方だの儲け方だの『方法』を売る記事や広告は片っ端から詐欺だと思ってください。気になったらまずやってみるのが吉。失敗から学ぶ方が安く上がりますからね。


 そんなわけで。

 基本は『SNSはフォローご勝手に』にしている私ですが、最近はちょいちょいフォロー外したりブロックしたりしてます。

 病気垢では私に構わんといて、マジで。

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