第46話『タケミカヅチ』
誤訳怪訳日本の神話・46
『タケミカヅチ』
イザナギ・イザナミのミトノマグワイ(男女でいたすこと)の最後に生まれたのが火の神(ホノヤギハヤヲ)であることは、5『イザナギ・イザナミの神生み』で触れました。
イザナミを焼き殺したホノヤギハヤヲはイザナギによって切られてしまいますが、この時に使われた剣がイツノヲハバリで、このイツノヲハバリに着いた血から生まれたのがタケミカヅチです。
アマテラスにすると、母の仇の火の神をやっつけた特別な剣で、その剣が神として神格化したものですね。
アマテラスに命じらて出撃したのは息子に当るタケミカヅチです。
タケミカヅチはアメノトリフネに乗って出雲の國の伊耶佐の小濱(いぎさのおはま)に降り立ちます。
この時の現れ方が、赤塚不二夫の漫画風なのです。
最初に、このくだりを読んだ時は『天才バカボン』の一コマかと思いました。
岩の上に突き刺さったトツカノツルギの上で胡座をかいています。
ときどき、上下が逆さまになったりして、驚くオオクニヌシに凄いことを言います。
「オオクニヌシ、ここは豊蘆原の中国(トヨアシハラノナカツクニ)は天照大神のお子であるアメノオシホミミ(アマテラスの玉から生まれた)が治めることになった」
「え、初めて聞いたぞ」
「初めて言ったのだ」
「なんだ、それは!?」
「これまで、アマテラスさまは、三人の神を遣わされたが、ことごとく役に立たなかった」
「ワハハ、頼りない奴ばかりだったからだ」
「ちがうぞ、オオクニヌシ。アマテラスさまは、なるべく穏便に国譲りを果たそうとなさって、穏やかな神たちを遣わされたが、仏の顔も三度まで……神さまだけどな。もう、四の五の言わせねえぞ。俺は、イザナミノミコトを焼き殺した火の神をギッタギタにやっつけたイツノヲハバリの息子だ。でもって、親父よりも強いからな、逆らったらぶっ殺す!」
バカボンパパのようなシュールな現れ方だけでも不気味なのに、その出自を聞いて、オオクニヌシはビビってしまいます。
「えと……わたしはね、根の国粗忽国の……」
「粗忽な国なのか?」
「いや、底つ国だ。いちいち変換ミスを言わんでもいい(^_^;)、で、粗忽国……うつってしまった」
「底つ国がどーした?」
「底つ国のスサノオノミコトから頂いた土地だ、簡単には渡せるか」
「アホか。スサノオなんて、とっくの昔にアマテラスさまに負けとるぞ。んなのは無効に決まっとるだろーが。粗忽国なんてめじゃねえ」
「あ、また変換ミス」
「変換ミスは、おまえがバカだからだ、さっさと譲れ。譲ったら、ちゃんと神社たてて祀ってやるぞ。嫌なら、ここで死刑だ!」
「わ、分かった(;'∀')」
オオクニヌシは降参しますが、取り巻きの部下の神たちが剣を抜いたり、大岩を投げつけて抵抗しますが、タケミカヅチは特大の雷を落としてやっつけてしまいます。
ガラガラ ピッシャーーーン!!
タケミカヅチは剣の神でもありますが、雷神でもあります。
オオクニヌシは出雲の多芸志(たきし)の小浜に神社を建ててもらって隠居することになります。
こうやって、アマテラスは、改めて息子のアメノオシホミミを遣わすことにします。
しかし、先にも書きましたが、このアメノオシホミミが、どうにも頼りない。
一番最初に、中つ国遠征を命じられた時も、あれこれ理由を付けて断っていました。
そのために、アメノホヒ → アメノワカヒコ → タケミカヅチ の三人が相次いで派遣され、その都度、アマテラスは気をもんで、皴の数を増やしてしまったのです。
話は、まだまだ二転三転の気配です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます