第5話 幽霊部員のヤル気

その日は梅雨の晴れ間で天気は良かった。

放課後、千枝と陽子は教室で喋っていた。


陽子 「告白された?」

千枝 「うん…。」

陽子 「で?返事は?」

千枝 「勿論断ったわ。」

陽子 「でも、二年の真島 竜二センパイと言えばスポーツも出来て背も高くてカッコイイってので有名じゃない…。」

千枝 「天馬センパイの方がイイもん。」

陽子 「勿体無い…。今までどれだけ沢山の女子生徒が告白したと思ってんの?」

千枝 「じゃぁ陽子は天馬センパイから告白されたら付き合う?」

陽子 「なワケないじゃん。」

千枝 「同じ事よ。」

陽子 「全然違うと思うんだけど…。」

千枝 「天馬センパイの方がイイの!」


部室では…。


天馬 「ブエックシ!!」(くしゃみ)

真弓 「キタナイなぁ…。」

天馬 「出るモンは仕方ないだろ…。」

優子 「千石先輩。」

信人 「ん?」

優子 「せっかく演劇部に居るんだし、何か活動ってないんですか?」

信人 「あるんならとっくにしてるさ。」

優子 「ですよね~…。」

太一 「こんちわっす。」(入ってくる)

天馬 「よう。今日は何もネタないぜ?」

太一 「ヤ…ヤダなぁ先輩。俺だって新聞部のネタ集めばっかやってるワケじゃないんですから。」

天馬 「それは失礼。」

太一 「神宮寺先輩とは仲が悪いみたいですね。」

天馬 「アイツがイロイロと手ぇ出してくるからだ。」

太一 「悪い人では無いんですがね…。」

天馬 「そう祈るよ。」

太一 「で、部長は居ないんですか?」

優子 「どっちの?」

太一 「勿論コッチですよ。」

信人 「何か今日は外せない用事とやらがあるらしい。」

太一 「そう言えば正吾は?」

天馬 「同じ一年で男子部員のオマエが新聞部ばっか行ってこっちに来ないからサボリっぱなしだ。」

太一 「またゲーセン通いかな…。」

真弓 「そう言えば千枝ちゃんも陽子ちゃんも今日は来てないね。珍しく。」

太一 「ってか部長居ないなら帰りますね。」

信人 「何か用事でもあったのか?」

太一 「いえ。ココを辞めようと思って。掛け持ちしてどっちつかずってのはイヤだし、何よりココには新聞部の情報集めが目的で入部しましたし。ココに来ても、もう情報は集まらなさそうなので。」

信人 「そうか。退部届けは書いてきたか?」

太一 「えぇ。」(紙を出す)

信人 「じゃぁ俺が受け取っておこう。これでも副部長だから。」

太一 「宜しくお願いします。じゃぁ、これで。今までお世話になりました。」

天馬 「おう。」(太一は出て行く)

優子 「こりゃ正吾君はマスマス顔を出さなくなるわね。」

天馬 「千石先輩。」

信人 「ん?」

天馬 「どうしてココって活動しないんスか?」

真弓 「アラヤダ。何かヤル気出してる幽霊部員が居ますが。」

天馬 「ヤカマシイ。」

信人 「しないというか…まぁ出来ないって言った方が正しいかな。」

優子 「できない?」

信人 「部費がおりないんだ。」


一同 「…。」


天馬 「それで学校側は廃部にはしないんですね…。」

信人 「廃部にはしないが、部費は出さない。ソレで良ければ勝手にやってくれって事じゃないかな。部員数がゼロになったら確実に廃部だろうけど。部員が居る間は廃部にしないんじゃないかな。」

天馬 「千石先輩が入部した時は既に部費は出てなかったんですか?」

信人 「いや。出てたね。その年で部費が打ち切りになった。」

真弓 「なんで…ですか?」

信人 「新聞部が出来たからね。」

一同 「!!」

信人 「だから成果も上がらない部の部費を削除して、それを新聞部に当てたってワケだ。」

天馬 「妙なトコで繋がった…。」

信人 「だから今、新聞部は必死なんじゃないかな。成果あげないとね。最近落ち気味みたいだからな。」

天馬 「絶対ココを廃部にはしないからな。」

優子 「あら珍しい。」

天馬 「夏を過ぎたら俺は辞めるツモリだったけど、続ける事にした。」

信人 「続けてもイイ事ないかも知れないぞ?」

天馬 「イイ事があるかも…なんて思ってるんなら最初からココには入りませんって。」

真弓 「そりゃ…そうね…。」


一方…。


陽子 「で?何て断ったの?」

千枝 「『私には他に好きな人が居ます。』って言ったのよ。」

陽子 「それで相手は?」

千枝 「『分かった…。』って言ったわ。」

陽子 「フツーね…。」

千枝 「何を期待してたのよ?」

陽子 「だって千枝が真島先輩をフッたなんて…。」

千枝 「分かった分かった。」

陽子 「まだ間に合うかもよ?」

千枝 「なにが?」

陽子 「今ならまだ真島先輩と付き合えるかも。」

千枝 「だからぁ~…。」

陽子 「ホント…あの人のドコがそんなにイイんだか…。」


天馬 「ヘェッキシ!!!」


天馬 「誰かウワサでもしてんのか…?」

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(仮題)天高く、馬落ちる恋 HR @hrisland0917

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