第4話 新聞部

五月も後半に差し掛かると梅雨がやってきた。

教室では天馬と大地が喋っていた。


天馬 「まったく毎日毎日ジメジメしやがって。」

大地 「梅雨だから仕方ないじゃん…。」

天馬 「仕方ないとかそういうモンダイじゃなくて、俺はジメジメすんなって言ってんだよ。」

大地 「ムチャクチャだね。毎度毎度。」

天馬 「オマエに言われたくないね。」

大地 「あ・藤沢先輩だ。」

天馬 「え?」(キョロキョロする)

大地 「オマエは毎日毎日同じように引っかかるねぇ…。」

天馬 「テメェ…マジで許さないからな…。」(立ち上がる)

大地 「ジョ…ジョークじゃん…。」

天馬 「問答無用!」(大地に飛びかかろうとする)

雅美 「オーイ安藤。」

天馬 「なんだよ!!」

雅美 「なにまたキレてんのよ?客だよ。」

天馬 「まったく…雅美…。オマエは毎回毎回…。」

雅美 「仕方ないでしょ。私の席は廊下から近いんだから。」

天馬 「ったく…。覚えてろよ!大地!!」

大地 「き…聞こえなぁ~い。」

雅美 「新聞部部長よ。」

天馬 「またか…。」


そして廊下に出ると、新聞部部長の神宮寺 玲子が待っていた。


天馬 「今日は何の用だ?来るなら直接俺のトコに来いって言ってるだろ?」

玲子 「だってアナタいっつも相方とイチャイチャしてるじゃないの。」

天馬 「雅美だってイイ迷惑なんだよ。それとも何か?今日は俺と大地の熱愛報道でもするか?」

大地 「イヤン。」(少し離れたトコから聞いていた)

天馬 「オマエは黙ってろ!」

玲子 「そんなの記事にすらならないわ。」

天馬 「そうかい。二年で既に部長になった人ともなれば求めるものが違うねぇ。」

玲子 「二年にもなってダラダラしてる人よりはマシだと思うわよ。」

天馬 「ラチがあかねぇ。何の用だ?」

玲子 「太一君から情報をもらったのよ。」

天馬 「あぁ、ウチと新聞部と掛け持ちしてる一年か。」

玲子 「アナタが他校の生徒数人をケガさせたってね。」

天馬 「相変わらず情報が遅いねぇ…。」

玲子 「な…。」

天馬 「春香先輩を見習えよ。」

玲子 「…。」

天馬 「しかもその件は解決済みだ。校長にでも聞いてみな。」

玲子 「でもアナタがケンカしたのって裏富高校でしょ?どんな学校か知ってるの?」

天馬 「さぁ。興味ないね。」

玲子 「痛いメ見ても知らないから。」

天馬 「ソレはご親切に。おととい来てください。」

玲子 「ムカツク…。」(歩いて行く)

天馬 「ふぅ…。」

雅美 「相変わらずシブトイわね。新聞部長。」

天馬 「オレに張り付いてりゃ何かネタがあるとでも思ってんだろ。」

大地 「天馬くんモテモテじゃん♪」

天馬 「今日は息の根を止めてやる。」

大地 「結構です。」

雅美 「でもさぁ、新聞部って、やる事汚いよねぇ…。新聞部員は他の部と掛け持ちさせて情報を集めてるみたいだし。」

天馬 「ソレも神宮寺が部長になってかららしいぜ?アイツは一年の時点で既に指導力を発揮してたらしいし。」

大地 「三年も数人居るが、その三年全員一致で神宮寺を部長に推薦したみたいだしな。」

雅美 「あぁヤダヤダ。」

天馬 「学校側もよく何も言わないよなぁ。」

雅美 「新聞部に何か言うくらいならアンタはとっくに退学よ。」

大地 「もっともだね。」

天馬 「そん時はオマエラも道連れだ。」

雅美 「ちょっと。大空は分かるけど、何でアタシまでよ?」

天馬 「ついでだ。」

雅美 「死んでもお断りよ。」


三人の後ろから恐る恐る声がかかる。


千枝 「あの~…。」

天馬 「あ・千枝ちゃん。」

千枝 「何か話し込んでるみたいだったから声をかけるのやめようかとも思いましたが。」

雅美 「イイのイイの。どうせコイツラは大したハナシしてないんだし。」

大地 「おい…『天地』にケンカ売ってんのか?」

天馬 「その『天地』ってのやめろよ…。イイ加減に。」

千枝 「『天地』?」

大地 「『天馬』の『天』に『大地』の『地』で『天地』。カッチョイイでしょ?」

千枝 「カッコイイなぁ~…。」

雅美 「ウソ…。」

天馬 「千枝ちゃんまでカンベンしてくれよ。何か用事?」

千枝 「大した事じゃないんですけど…今日は部活には来ないのかなと思って…。」

天馬 「あぁ、今日はパス。」

千枝 「そうですか…。じゃぁ明日は来てくださいね♪」

天馬 「気がむいたらね。」

千枝 「はい。じゃ、また明日。」

天馬 「あぁ。」(千枝は出て行く)

大地 「部活に行ってやればイイのに。」

天馬 「だって部室は暇だしジメジメだしさぁ。何か教室に居るよりも余計にジメジメしてる気がするんだよなぁ。」

雅美 「そういう問題じゃないでしょうが。」

天馬 「?」

雅美 「コレだから困るのよ…。」

天馬 「そういうオマエラだって部活に行ってないじゃん。」

雅美 「ソレとコレとは別なの。」

大地 「どうせなら俺達で何か部活作るか?」

雅美 「そういうテもあるわね。もし作るとしたら何を作るの?」

大地 「帰宅部。」

雅美 「アホ。」

大地 「…。」

天馬 「そもそもソレは部活動として成立しない。」

雅美 「もし、私が何か部活作ったら入ってくれる?」

大地 「オレは別にイイけど?」

天馬 「オレはパス。」

雅美 「なんで?どうせ演劇には行ってないでしょ。」

天馬 「行ってないけどパスだ。」

雅美 「付き合い悪いねえ。」

天馬 「夏過ぎたら入ってやってもイイけどな。」

雅美 「なんで?」

天馬 「ヒミツ。」


三年生は大体夏休み前を目処に部活を引退する。

天馬自身は春香が部活を引退したら演劇部に所属し続ける気はなかった。

何故なら、天馬が演劇部を選んだ理由は春香だったから…。

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