第8話 カルテ

翌朝…。


神崎 「よく眠れたか?」

杏子 「えぇ。快適でした。」

和樹 「まだ眠いけどね…。」(フラフラしている)

神崎 「早寝早起きが基本だぞ?」

杏子 「まったくです。」(和樹を見ながら)

和樹 「別に夜更かしした覚えはないけど?」

神崎 「でも、早く寝ようと思ってたワケでもないだろう?」

和樹 「確かに。」

杏子 「じゃ、行きますね。」

神崎 「おう。気をつけてな。何かあったら電話してこい。」(名刺を渡す)

和樹 「何から何までありがとう御座いました。」

神崎 「おう。行って来い。」

和樹 「(笑顔で)行って来ます。」

杏子 「行ってきまぁす♪」


そして二人は再び歩きだした。

見えなくなるまで神崎に手を振りながら。


杏子 「イイ人だったね。」

和樹 「あぁ、普通は言えないぞ?自分の娘を奪ったヤツの子供に『行って来い』なんてさ。」

杏子 「待ってるぞって言ってくれてるんだよね。」

和樹 「嬉しいじゃん。」

杏子 「そうね。さて、これからどうする?」

和樹 「情報が少なすぎる。」

杏子 「もう一回戻る?輝石ヶ丘に。」

和樹 「戻ってもアソコは廃墟だったしな…。」

杏子 「もしかしたら何か手がかりがあるかもよ?病院とかに。」

和樹 「病院?そっか…。あの事故の後に病院に運ばれたヤツとか居るかも知れないしな。」

杏子 「ヘタしたらアナタの両親も運ばれたかもしれない。」

和樹 「何てこった…。ソコに気づかないなんて…。」

杏子 「どうする?」

和樹 「もう一回戻ってみるか。」

杏子 「そうね。」


そして二人は再び輝石ヶ丘へと向かった。


和樹 「何回来てもショックだよなぁ…。」

杏子 「…。」

和樹 「で、病院はドコにあんだろう…。」

杏子 「この廃墟じゃねぇ…。でも、分かるでしょ。病院は。」


と言いながら取り合えず歩きまわる。

暫く歩きまわると…。


和樹 「あ・アレじゃないか?」

杏子 「っぽいわね。」


そして以前は病院だったであろう建物の残骸に近づく。


和樹 「しかし…このガレキの山じゃ、カルテ探すのにも一苦労しそうだな。」

杏子 「ウダウダ言わないで探すの。そうしないと何も分からないわよ?もしかしたら何か手がかりがあるかも知れないんだから。」


話しながらも動かせそうなガレキから少しずつ動かしていく。

そして数時間が経過した…。


和樹 「オイ。少し休んでてもイイぞ?」(ゼーゼーいいながら)

杏子 「その言葉はそのまま返すわ。」(息は切れていない)

和樹 「どういう体力してんだよ…。」

杏子 「何も見つからないわね。」

和樹 「あぁ、全部処分されたかな?」


と言いながら更にガレキをどけているとダンボールが何個も出て来る。


和樹 「お。コレ…当たりっぽくない?」

杏子 「だとイイけど…。」

和樹 「どれどれ…。(ダンボールを開ける)お♪カルテ発見♪」

杏子 「見せて。」(和樹から受けとる)

和樹 「日付から見てもその頃のカルテだ。」

杏子 「みたいね。しかし…コレといって何も書かれていないわね。」

和樹 「他のも調べてみよう。」


そして二人がダンボールの中を手分けして探し出して更に数時間がたった。

もう既に陽は暮れかけている。


杏子 「今日はこのヘンにしない?」

和樹 「あと少しだ。」

杏子 「今日はココに泊まるしか無さそうね。」

和樹 「そうだな。」

杏子 「ねぇ…。自分の家とか覚えてないの?」

和樹 「(手は休めないで)ソレが思い出せないんだ。」

杏子 「だよねぇ…。知ってたら真っ先に行ってるわよね。」

和樹 「まぁな。」

杏子 「よく現実を受け止める気になったわね。」

和樹 「まだ半信半疑さ。妙なチカラを持ったヤツラってのも怪しいし、ソレが俺の両親のせいだってのも怪しい。ただ、オマエは現実に居るからな。」

杏子 「…そうね…。」

和樹 「!」

杏子 「どうかした?」

和樹 「若菜…雅之…。あった…。」

杏子 「!!」


遂に和樹は父親のカルテを見つけた…。

果たしてソコには何が書いてあるのか…。

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