第7話 神崎商店
和樹達は見崎町へとやって来た。
和樹 「ココはどうやらマトモみたいだな。」
杏子 「イヤ…。輝石ヶ丘が特別なんだって。相当ショックだったみたいね…。」
和樹 「あんま記憶はなくても産まれ育った場所だからな。」
杏子 「そういう人間っぽいトコもあったんだ。」
和樹 「どういう意味だよ?」
と言いながら歩いていると前方に『神崎商店』の文字が見える。
和樹 「あれがそうか?」
杏子 「私に聞かないでよね。」
和樹 「でも『神崎商店』って書いてあるしな。」
杏子 「入りましょ。」
二人は店内へ。
外に比べると少し薄暗い店内。
奥にはこの店の店主らしき男=神崎 真純=が座っていた。
和樹 「こんにちわぁ~。」
神崎 「おぅ。」
杏子 「『おぅ』って…。」
和樹 「(大して気にもとめずに)晴也に紹介されてきたんですけど。」
神崎 「あぁ、アンタが晴也が言ってた、和樹君かぃ。」
和樹 「そうです。」
神崎 「どれ、携帯を貸しな。」(手を差し出す)
和樹 「デカイ手っスね…。」(携帯を乗せる)
神崎 「まぁな。」
そして神崎は黙々と作業をしだす。
その間に和樹と杏子は店内を見てまわっている。
和樹 「一体…ココは何の店なんだ?」
杏子 「売ってるものはバラバラね。」
和樹 「何でも屋か?」
杏子 「さぁね…。」
和樹 「あのなぁ、オマエ少しは興味示す事ってないのかよ?いっつもそんなに冷めてちゃ楽しくないだろ?」
杏子 「あら?私は結構楽しんでるわよ?」
和樹 「ウソつけよ。」
杏子 「ソレよりもアンタは自分の心配したら?」
和樹 「なんでだよ?」
杏子 「この前みたいなヤツラが襲ってくるかも知れないんだよ?」
和樹 「その時はその時だ。」
杏子 「死んでも知らないからね。」
和樹 「別に構わないけど?」
神崎 「(カウンターから)盗み聞きするツモリは無かったが…。」
和樹 「?」
神崎 「声が大きいから聞こえてるぞ。」
和樹 「別にイイよ。神崎サンは悪い人じゃなさそうだし。」
杏子 「どうして名前が『神崎』だって分かるの?店名がそうだからって神崎さんだとは限らないじゃない…。」
和樹 「見てみろよ。」(神崎が座ってるカウンターを指差す)
杏子 「ん?………あ…。」
そこには『大社長:神崎真純』と書かれたプレートが置いてあった。
和樹 「な♪悪い人じゃなさそうだろ?」
杏子 「そうね。オトコは、アンタみたいにベラベラ喋るんじゃなくて、神崎サンぐらいの口数の方が男らしいし、説得力もあるわよね。それにオチャメ♪」
和樹 「何気にヒドクないか?」
杏子 「あれ?アナタ無口だったっけ?」
和樹 「いつかブッとばしてやるからな…。」
杏子 「まずは私の動きを見切らないとね。」
和樹 「くっ…。」
神崎 「ハナシの腰を折るようで申し訳ないが、『ヤツラ』とか『襲ってくる』とか『死んでも』とか…穏やかじゃないな。この携帯電話の改造もソレが原因で?」
和樹 「まぁね。ちょいと親がね。」
神崎 「名字は?答えたくなければ答えなくてイイ。」
和樹 「若菜。」
神崎 「若菜って…。そうか。そういう事か。」
杏子 「私は木下 杏子でぃーす。」
和樹 「オマエには聞いてないから。」
杏子 「殴るよ?」
神崎 「早いトコこの町を出た方がイイ。」
和樹 「なんで?」
神崎 「ココと輝石ヶ丘は近いからな。あの事件の犯人の息子がココに居ると知れたら…。あの事件で亡くなった人も少なくないからな。」
和樹 「だよなぁ…。とんでも無い事をしたんだよな…。」
神崎 「私も娘を亡くした。」
和樹 「!!」
杏子 「!」(身構える)
神崎 「別に君たち二人を恨んでるワケじゃない。仕方なかったんだよ。」
杏子 (構えを解く)
和樹 (膝から崩れ落ちる)
杏子 「ちょ…。」
神崎 「大丈夫か?」
和樹 「そ…そんな…。神崎サンの娘さんが…。謝ってもどうにもならないけど…。何てこった…。」(涙を流しながら)
杏子 「…。」
神崎 (和樹の横にしゃがんで和樹の肩に手を置く)
和樹 「ゴメン…。ゴメン…。オレの親のせいで…。」
神崎 「言わなければ良かったな。こっちこそ済まない。」
和樹 (首を横に振っている)
杏子 「…。」
神崎 「でも、会えて良かった。」
和樹 (顔を上げる)
神崎 「イイ目をしとる。たぶん、和樹の両親も同じようにイイ目をしてたんだろうな。」
和樹 「神崎サン…。」
神崎 「娘は失ったが、『和樹』という新しい出会いがあった。」
杏子 「………強い…。」(呟く)
神崎 「だから俺は和樹の両親を恨んでいない。」
和樹 「俺…。」
神崎 「分かってる。」
和樹 (頷く)
神崎 (カウンターに戻って作業を再開する)
杏子 「ねぇ。」
和樹 「うん?」
杏子 「誤解してた。ゴメン。」
和樹 「何が?」
杏子 「たぶんアナタの全てを。今の涙見て決めたわ。私はアナタにズット付いてってあげる。」
和樹 「ありがたメイワク。」(でも笑っている)
杏子 (つられて笑う)
和樹 「イイ笑顔持ってんじゃん。」
神崎 「和樹もな。」
和樹 (ニカッと笑う)
神崎 「今日は夜も更けてきた。泊まっていくとイイ。今から外に出ると、逆にキケンだからな。」
和樹 「助かります。」
杏子 「そうします。」
和樹の両親が起こしたと言われている事件。
和樹自身にはソコまで実感は無かったが、この日に会った神崎の娘が、その事件で命を落としたと聞いて、実感させられた。
早く真相を知りたい…。
そう和樹は心から思っていた…。
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