第4話 旅立ち

気がつくと和樹はベッドに寝ていた。

時計を見て体を起こす。

もう昼をまわっていた…。


和樹 「?…夢か…?」


そう言って伸びをしようと両腕を組んで伸ばす。

だが両腕がギシギシと痛む。


和樹 「イテテテテ…。やっぱ夢じゃなかったか…。」


そう言って荷造りを始める。


和樹 「このままじゃあの人達にも迷惑がかかるな。出て行くか。」


そして準備を終えて和樹は階下へ。

この日は丁度剛三も休みで、家にいた。


和樹 「あの。」

剛三 「なんだ?やっと起きたのか。」

和樹 「今までお世話になりました。」

剛三 「?」

良子 「何を言ってるの?」

和樹 「このままじゃ二人にも迷惑かかるんで出て行く事にします。」

剛三 「バカを言うな!学校はどうする?生活費は?」

和樹 「学校は辞めます。生活費は…。」

剛三 「卒業するまではウチに居るんだ。」

和樹 「スンマセン。もう決めたんです。」

良子 「…。」

剛三 「分かった。学校には俺が言っておく。」

和樹 「じゃぁ、どうも有難う御座いました。」(一礼して出て行く)


玄関を出て、門をくぐり、外へ出る和樹。

その石川家の家の壁に身を預けている杏子が居た。


和樹 「オマエ…。」

杏子 「家を出たの?これからどうするの?」

和樹 「関係ねぇだろ。」

杏子 「この家に居た方が良かったんじゃないの?」

和樹 「どうせ俺の事は邪魔者としてしか見ていない。」

杏子 「そうかしら。じゃぁ何故ワザワザあなたを引き取ったのかしらね?」

和樹 「親の遺産さ。両親が共に死んだから、その財産は全て俺のトコに来ると思ったんだろう。そして俺を引き取った。しかし、遺産は無かった。」

杏子 「…。」

和樹 「どういうワケかは知らないが、一つハッキリしている事は遺産は俺に与えられるようにはなってなかったって事だ。」

杏子 「…。」

和樹 「でも、引き取ってしまった後にそれを知った二人は、ソッコーで俺を捨てるワケにはいかなくなった。世間体を気にしてな。そういう理由で俺は石川家に留まった。」

杏子 「でもどうするのよ?この先、生活していけるの?」

和樹 「さぁな。」

杏子 「呆れた…。」

和樹 「つぅか、アンタさぁ…俺にラブレター寄越しておいて、俺はハッキリ断ったよなぁ?なのに何故つきまとうんだ?」

杏子 「あれ?ソコしか読んでないの?」

和樹 「ソコしかって?」

杏子 「あの中にはもう一枚手紙があって、ある物も一緒に入ってたハズだけど?」

和樹 「もう一枚?ある物?」

杏子 「ヤレヤレ…。あの手紙は大事なものなのよ?ドコにあるの?」

和樹 「…捨てた…。」

杏子 「バカね…。まぁアナタがソレでイイならイイわ。」(立ち去る)

和樹 「オイ!待てよ!!」(追いかけようとするが見失ってしまう。)


そして和樹は手紙が気になったので学校へとやって来た。

自分のクラスに入る。丁度今は昼休みのようだ…。


和樹 「よう。晴也。」

晴也 「和樹。」

和樹 「あのさぁ、ココに捨てたゴミってドコに行くか知ってる?」

晴也 「一階の裏庭の焼却炉だけど?それより和樹…。どうしたんだ?今日は…。」

和樹 「ワリ。説明してる時間ないんだわ。サンキュな。」(出て行こうとする)

晴也 「和樹…。」

和樹 「(出口付近で止まって)あぁ、晴也。今まで有難うな♪」(走って出て行く)

晴也 「今まで…?」


そして焼却炉では…。


和樹 「良かった…。まだ燃えてない…。」


それをポケットに突っ込んでまた走り去る。

その数分後に晴也が焼却炉に走ってくるが当然和樹の姿はない。


晴也 「和樹…。どうしたんだ?やっぱ昨日のゴタゴタが関係してるのかな?」


そして小高い丘へと歩いてくる和樹。

大きな気に背を預けて手紙を読んでみる。


和樹 「本当だ。もう一枚ある…。えぇと…『どっちかと言えばコッチが本題なんだけど…。最近体に異変を感じない?感じないのならイイんだけど。もし何か異変を感じたら一緒に入れてるクスリを飲んで。でも、場所を選んで飲んでね。深い昏睡状態に陥るから安全な場所で飲むように。異変ってのは、たぶん起きたらソレだとスグ分かる異変だから。』…。なんだコリャ…。」


そう言って手紙をよく見てみると小さな鉄ともアルミとも何ともとれないような容器に入ったクスリが出てくる。


和樹 「異変か。信じてイイものか。」


と言いつつも手紙は丁寧にたたんでポケットにしまう。

そしてクスリ(らしきもの)はネックレスに通しておいた。


和樹 「さて。こっからどうするかなぁ。携帯も石川名義だから置いてきたしなぁ。つぅか…服しかないんだよなぁ…。」


そのまま数時間ボ~っとしてるとイツの間にか寝てしまっていた…。

誰かが呼ぶ声で目を覚ます和樹。


和樹 「ん~…誰だよ…。」

晴也 「和樹っ!!」

和樹 「晴也!?しまった…。スグにココを動くべきだった…。」

晴也 「何があったんだよ?イキナリ昼休みに来てスグどっか行って!しかも帰りのホームルームで担任が和樹は退学したなんて言うから!」

和樹 「イロイロ面倒なんだよ。だから家も出たし、学校も辞めた。」

晴也 「昨日の事が関係してるのか?」

和樹 「あぁ。どうやらデカクなりそうだ。」

晴也 「で、これからどうするんだ?」

和樹 「まだ決めてない…。」

晴也 「少し時間をくれないか?」

和樹 「?」

晴也 「俺も全てにカタを付けて和樹と一緒に行くよ。」

和樹 「晴也がそうする必要はないだろ?俺と一緒に居たら昨日みたいな事になるぞ?」

晴也 「決めた。今・決めたんだ。」

和樹 「なにを?」

晴也 「和樹とは一生友達で居るって決めた。和樹にはナイショにしててくれ。」

和樹 「俺を誰だと思って話してるんだ?」

晴也 「へへ。照れ隠しだ。」

和樹 「なら言うな。」

晴也 「だって聞くから…。」

和樹 「サンキュ。晴也。」

晴也 「俺は和樹を見捨てて普通に過ごすよりも、和樹と一緒に何かしてた方が晴天だからな。」

和樹 「ホント好きだねぇ♪その言葉。」

晴也 「まーね♪梅雨前線なんかに負けません☆」

和樹 「そりゃ心強い。」


十日間程で晴也は学校も辞め、親には長期の旅行に行くと言って出てきた。

勿論不信がられたが、ソコは押し切ったようだ。

ここから先に何があるか分からない、ドコに行けばイイかも分からない。


そして…本当に学校まで辞めて出てくる必要があったのかも…分からなかった…。

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