第2話 前兆
二時間目の授業が終わった…。しかしまだ晴也は来ない。
休み時間に晴也に電話してみるのだが携帯電話の電源が入っていないらしい。
外は雨が降っている…。
女生徒 「わ…若菜君…。」(モジモジしながら)
和樹 「あ?」
女生徒 「こ…これ…。」(と言って手紙を渡して去っていく)
和樹 「…。」(手紙を読む)
その手紙には、和樹が好きだという事、そして昼休みに裏庭に来て欲しいと書いてあった。
差出人名には=木下 杏子=と書かれていた。
和樹 「木下?聞いた事ないな…。」
だが、和樹は気付いていなかった…。
その手紙は二枚だったという事、そして、その封筒の中に小さな『何か』が入っていたという事に…。
そして昼休みになった。
さすがに晴也が気になるので和樹は学校を昼からサボル事にした。
そのついでに裏庭に寄る事にした…。
杏子 「若菜君…。来てくれたんだ。」
和樹 「少し急いでるんだ。ハナシがあるなら早めに頼むよ。」
杏子 「ハナシも何も…。手紙呼んでくれたのなら分かるハズよ?」
和樹 「俺の事が好きって?」
杏子 「そう。」
和樹 「ワリ。俺と付き合っててもイイ事ないぜ?」
杏子 「それでもイイの。」
和樹 「どっちにしても答えはNOだ。じゃな。」(走って行く)
杏子 「あ!ちょっとぉ~…。」
そして雨の中を和樹はただ走っていた。
晴也がドコに居るかなんて分からない。
でも走らずには…探さずには居られなかった…。
少し走ったトコで和樹は足をかけられて豪快に転ぶ。
和樹 「いってぇ~…。誰だコラッ!!……って…。」
杏子 「ハナシは終わってないんだけど?」
和樹 「(ビショ濡れでゼェゼェいいながら)なんで…。全力で走ってきたのに…。」
杏子 「(息は全く乱れてない)そんなのどうでもイイじゃない。」
和樹 「走ったのか?ソレにしちゃ息はきれていないし…何より濡れていない…。」
杏子 「濡れるのはキライなの。」
和樹 「あのなぁ、今は遊んでるヒマないんだよ。それに俺と仲良くしてると白い目で見られるぞ?」
杏子 「だからイイって言ってるでしょ。」
和樹 「勝手にしろ!」(走り出す)
杏子 「学習能力ゼロ。」
少し離れた場所を、ドハデな傘に負けないくらいハデな格好をした男が歩いていた。
名前は=大沢 藤次=
藤次 「あぁ…雨はボクの心を癒してくれる。そして…この汚れた町を洗い流してくれているかのようだ…。」
周囲の冷たい視線を受けながら一人ブツブツ呟いて歩くこの男に、三人の男が近寄ってきた。
男1 「おいオマエ。」
藤次 「ん?」
男2 「ウゼェんだよ。ブツブツブツブツよぉ。」
藤次 「誰だい?キミタチは。」
男3 「ウルセエよ。大人しく消えろ。ココは俺たちのナワバリだ。」
藤次 「ナワバリ?まだ使ってる人・居たんだ。そんな言葉は縄文時代に絶滅したと思ってたよ。」
男1 「上等だ。」(ジリジリと藤次に近寄ってくる)
藤次 「怒ったのかな?じゃぁ弥生時代にしておくよ。」
男2 「ブッ殺してやる!!」
藤次 「残念ながら、その目的は達成されない。何故ならキミタチはボクよりも弱いからね。」
男3 「っだああぁぁぁ!!」(とびかかる)
次の瞬間には男3は地面に崩れ落ちている…。
そして雨に混じって赤い液体が広がっていく…。
男1 「血…!?」
男2 「何しやがったテメェ!!」
藤次 「そこ。(地面を指差す)」
男1 「?」
男2 「??」(二人して藤次が指差した方を見る)
と、次の瞬間には二人とも男3と同じように地面に倒れている。
そして周囲も異変に気付き出し、ザワザワとしている。
藤次 「あぁ~あ…。服が少し汚れたじゃないか…。同じ服はあと十五着しか持ってないのに…。」
そして藤次が服の汚れを傘をさしたまま器用に落としていると正面からスゴイ勢いで和樹が走ってくるのに気付く。
藤次 「こんな雨の中・傘もささずに元気だねぇ…。」
和樹が藤次の傍を通り過ぎる時に近くの水溜りの上を思い切り駆け抜けたタメに藤次は泥水をアタマからかぶってしまう…。
藤次 「…。………。………………。」
和樹 「ワリッ!!急いでるんだ!!」(走りながら謝っている)
藤次 「許すかボケェェッ!!」
鬼のような形相に変わり、口調も穏やかではなくなった藤次は和樹を追いかけようと走り出そうとする。
が、藤次の頭上をフワリと飛び越す何かの気配を感じる。
上を見るヒマも無く、今度は藤次が地面に倒れていた…。
杏子 「(着地して)少し眠っててもらえるかしら?アナタ(藤次)が傷つけた三人も致命傷では無いだろうからほっといても大丈夫ね。」
周囲の人々は何がなにやら分かっていない…。
杏子 「ったく…あの鉄砲玉は…。ハナシはまだ終わってないっての!!そうでなくてもこんなヤツ(藤次)みたいなのがウロウロしてるってのに!分かってんのかしら…。今、ココが変わり始めてるって事を…。」
やはり彼女は雨に濡れていなかった…。
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