ENDLESS STORY

HR

第1話 本日も晴天ナリ♪

彼には両親が居ない。

兄や姉、弟や妹も居ない。

親戚の=石川家=に十二歳の時に引き取られた。

彼ももう高校二年だ…。

周囲のニンゲンからは『犯罪者のコドモ』だとか影で言われ続けている。

そして、彼は彼の両親の死因を知らない…。

だが彼は両親を信じている。そんな事するヤツラじゃないって。

だから彼は、彼の名前を恥じていない。


=若菜 和樹=


という名前を…。


ある梅雨も半ばに差し掛かった日の事だ。

和樹は引き取ってくれている=石川 剛三=と、その妻=良子=に呼ばれた。


剛三 「和樹。」

和樹 「なんスか?」

剛三 「高校を卒業したらどうするんだ?」

良子 「…。」

和樹 「働きますよ。」

剛三 「イカン。大学へ進学しなさい。」

和樹 「はぁ?そしたらオジサン達への負担が大きくなるだけですけど?」

剛三 「恩返しをしようと思うなら、責めてイイ大学を出て、イイ仕事に就いてくれ。」

和樹 「大学には行かない。」

良子 「和樹君…。」

剛三 「行く場所が無いオマエを引き取ってやったのにその言い方は何だ?オマエの父親の雅之とは親友だからだぞ?世間ではヒドイ言われようだが、アイツは大切な友達だった。だからオマエを引き取る事にしたんだ。」

和樹 「…。」

剛三 「何か言いたそうだな?」

和樹 「大学には行かない。」(出て行く)

剛三 「待て!和樹!!」

良子 「アナタ…。」

剛三 「なんだ?」

良子 「もう高校を卒業させたら働かせた方がイイんじゃない?そうしないとイツまで経っても和樹君に居座られるわよ?」

剛三 「しかし…。」

良子 「もうウンザリなのよ。」


和樹はヘコんだ時によく行く小高い丘へとやって来た。

木に背を預けてタバコに火をつける。


和樹 「どうして死んだんだろーなー…。オヤジ…。」

男 「(イキナリ声をかける)コラ若菜和樹!タバコを吸うな!!」

和樹 「!!」(慌ててタバコを消す)

男 「バァーーーカッ!!引っかかった♪」

和樹 「テメ…。なんだ…。晴也かよ…。」


この男は=和久井 晴也=。ワリと中のイイ友人である。

まぁ『仲がイイ』の種類もイロイロあるワケだが…。


晴也 「本日も晴天ナリ♪」

和樹 「分かった分かった。」

晴也 「よっこらせ。」(隣に腰をおろす)

和樹 「なんだよ。」

晴也 「あのなぁ和樹。誰だって悩んだりヘコんだりするもんなんだぜ?」

和樹 「知ってるよ。」(またタバコに火をつける)

晴也 「なら何故吐かない?」

和樹 「ルセーな。」

晴也 「ボクタチ、友達ダロ?」

和樹 「ワザトらしいんだよ。」

晴也 「ボクは前からキミが好きでした♪」

和樹 「ホンキで殴るぞ?」(だが顔は少し笑っている)

晴也 「和樹。」

和樹 「あ?」

晴也 「明日も学校来いよな?」

和樹 「俺が行かなくてもオマエには友達タクサン居んだろ?」

晴也 「何つーかさ、オマエは違うんだよ。他のヤツラとさ。」

和樹 「何だソレ。」

晴也 「だって初対面の時にさ、俺が和樹に声をかけたら、和樹が俺に言った言葉が『消えろボケ。』だったじゃん?アレには爆笑したね。」

和樹 「フツウはキレるトコなんだけどな。」

晴也 「だから俺は和樹と友達になる事にしたんだ。」

和樹 「それはどうも。」

晴也 「ねぇ…ワタシって…ウットオシイ?」(目をパチパチさせて)

和樹 「あぁ。今とか特にな。」

晴也 「まぁ気にすんな。」

和樹 「オマエが言うな。」

晴也 「じゃぁ、また明日な。」(立ち上がる)

和樹 「おう。」


そして晴也は帰っていった…。


和樹 「相変わらずヘンなヤツだな…。」


翌日。和樹が通う県立『藤ケ崎高等学校』では…。


和樹 「(教室に入ってくる)あれ?晴也が居ないな…。イツモは早く来て意味もなく踊ってるんだが…。」


そうこうしていると担任が入って来てホームルームが始まる。


担任 「ん?和久井は休みか?そんな連絡入ってないんだがなぁ…。」

和樹 (窓の外を気にしている)

担任 「そのウチ来るだろう。じゃぁホームルームを始める。」


昼になっても晴也は登校して来なかった…。

何かがおかしい…。和樹はそう思いはじめていた…。

和樹自身、深くは自覚していないが、後ろ指さされながら生きてきた和樹にとって最初に対等に接してくれたのが晴也だった…。

人を遠ざけながら生きてきた和樹に、晴也自ら近づいてきた…。

ソイツが急に居なくなった。


知らず知らずのウチに和樹は焦っていた…。

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