2
「レポーター!? 何それ!? 初耳なんですけど! ってか、私がリクルーターを引き継いだ時点で、この世界から足を洗ったんじゃなかったの、あのオヤジ?」
「菊乃のことが心配なんでしょ。実際に君の拉致事件が発生してもいるわけだし」
「そりゃぁ判るけど・・・」
「それよりレポーターの仕事だけど、重右衛門さんが笹塚をやった時、奴がレストランでトイレに立ったタイミングを見計らって実行されたって教えたよね? 当日、君は悪代官と越前屋に拉致されてたから知らないだろうけど」
「そうよ! もぅあいつらったら! 思い出しただけで腹が立ってくるわ! こんなか弱い小娘を!」
とは言え実際は、気弱な越前屋をネチネチとした言葉でいたぶっていたのは、菊乃の方なのだが。悪代官と越前屋の間に築かれた、固い信頼関係にひびを入れた張本人である。
「まぁまぁ。それより、奴がトイレに立ったタイミングをどうやって知ったか判る? 僕は重右衛門さんを転送する為に江戸時代の文永寺にいて。令和の出来事を把握することは叶わない」
「そっか。確かにそうだ。じゃぁ、どうやったわけ?」
「それがレポーターである史人おじさんの新しい仕事さ。彼がターゲットの行動を知らせてくれるんだ」
「お父さんが拓海みたいに端末を操ってるのかしら? んなわけ無いわよね。あの人、電子レンジをIT機器だと思ってるタイプだから」
「勿論、そうじゃないよ。それはね、予めこちらから送っておいた ──つまり時空原点が江戸時代に有る── トランスポンダーのボタンを押して、空転送をするんだ。このタブレットを見ていれば空転送エラーが表示されるから、何かの合図としては充分に役立つだろ? その表示はリアルタイムで更新されるから、少なくとも時間的なタイミングは正確に知ることが出来る。本来の目的とは違う使い方だけど、ちょっとした工夫で仕事の効率が劇的に改善された事例ってわけだね。君がリクルーターになった頃から採用された、新しいシステムだよ」
「じゃぁ、何? ターゲットの近くに、お父さんが張り付いていたってこと?」
「そういうことになる」
「フレンチレストランに?」
「そう」
「あのオヤジが?」
「しつこいな。そうだよ。ちなみに次のターゲットにも、おじさんが張り付くことになってるんだ」
「えぇーっ! そんなこと出来るわけ無いじゃん。だって相手が相手だもん!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます