3話 泣き声
階段を挟んで右側にある3の3教室。
その教室のドアは人間が1人分が入れる位開いていた。
そのまま一気に階段を駆け下りていきたいが、成神の足は3の3教室へと向かっていた。
(何でこんな事してるんだか…… ナニかが出てきたらどうすんだよ‥!)
自分自身でも、この行動が理解が出来ない。
だが彼の足は教室へと向かっておりドアに手をかけていた。
(もしかしたら、誰かいる可能性が……!!)
誰か居るのかもしれない。
そんな薄い期待感を持ちながらドアを開こうとすると、教室の中から小さく啜り泣く声が聞こえてきた。
(泣き声……誰か生きてる!!)
“ガラリ!”とドアを力一杯開く成神。
すると暗い空間の奥の方から“ガタガタ!!”と物音を立てながら黒い影が動くのを確認できた。
「お、おい!!」
「ひぃっ!助けてくれぇ!!」
その声は紛れもなく日本語。
つまり人間の言葉だ。
「待て!!人間だ!成神海斗だ!!」
自分でも驚く程の大きな声が出た。
教室に成神の声が響くとシンと静まり返る。
「に、人間……なの?」
「も、勿論だ えっと、君は……?」
弱々しい男性の声が聞こえてくると成神は心の底から安心した。
自分以外にも人が生きていた事。
そして何より1人では無い事に大きな安堵感が身体中を駆け巡る。
「ぼ、僕は……
弱々しく今にも消えそうな声で名前を言いながら出てくる男子生徒。
彼の名前を成神は知っていた。
実際に話した事は無いが、彼の事は悪い意味で知っていた。
「鈴木か…… 俺は成神だ」
「う、うん……」
この鈴木直樹は所謂イジメを受けていた生徒だ。
学年にいる一部の男子生徒にイジメを受けている場面を何度か見た事がある。
「でも良かった 生きてる奴がいた」
「ぼ、僕は此処から出たく無い!!」
「は?」
嬉しさを爆発させながら話す成神に対し、鈴木は直ぐにその場にヘタリ込む様に座り込んでしまった。
「嫌なんだ!何が起こっているのか分からない だったら此処から出なければ良い……!」
「おい!立て鈴木!」
「ひっ!?」
「この現状を見ろ!俺だって訳わかんねぇ事になっててぶっちゃけた話、パニクってる!でもよ‥‥動かなきゃ何ねぇだろ?」
「でも、僕は‥‥」
「めんどくせぇな!生きたいなら立て!此処にいてもいずれは死んじまう!だったら立って、必死に動き回れや!んで生き残るか死ぬかは分からんが、何もせずに死ぬよりかはマシだろうが!!」
成神自身、柄にも無い事を言っていると感じていた。
だけど自然と言葉が口から出てきていた。
「さぁ選べ このまま閉じこもって死ぬか 立って足掻いて生きるか‥‥!」
「あ、う……」
真っ直ぐ鈴木の目を見ながら
シンとなった時間が続いたが、鈴木はゆっくりと腰を上げる。
足はプルプルと震えており鈴木の中には恐怖心しか無い様だが、成神の言葉に彼は必死に勇気を奮い立たせていた。
「い、行くよ」
「よし それで良い」
立ち上がった鈴木に成神は大きく息を吐いた。
柄にもない事を言った事と、その言葉で鈴木が奮い立ってくれた。
そして自分以外の生き残りがいてくれた事にだ。
「鈴木には色々聞きたい事が……!?」
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