ep6.星空の下で。
朝陽さんと会ったあの海開きの宴の日以来、ワタシ達はすっかり連絡を取るようになり
たまに電話で長話をして笑ったりして、すっかり距離が縮まっていた。
おかげでDV元カレの事やあの人に植え付けられたトラウマも振り切れている様なそんな気がしていた。
今日は朝の10時に海の家熱帯夜をオープンさせ、そこから19時まで働き20時には掛け持ちしているダイニングバー江ノ島へと向かい今度はそちらで日付を跨ぎ1時まで江ノ島で働く。
そんなちょっぴりハードな週末…それでもボヤきもせずに頑張って働ける理由は料理を作る事が好きな事と江ノ島を退勤後、朝陽さんが星が綺麗に見える“とっておきの絶景“を見にドライブに連れて行ってくれるそんな約束があるからだった。
仕事が終わり賄いを食べた後、急いでワタシは私服に着替えいつもより少し濃いめの赤を唇に忍ばせる。
するとスマホが鳴り、見てみると朝陽さんからの電話だった。
一呼吸を置いた後少し声のトーンをいつもより少し上げもしもしと、電話にでる。
なぜなら少しでも可愛いって思われたいから私はもう完全に恋に落ちていた。
「あ、あの…もう江ノ島に着いてるんだけど出れたりする?」
「あ、あの…ってなんですか?なんだかよそよそしいですよ」
電話の向こうの朝陽さんの声を聞きウキウキしたりいつもと違うよそよそしい喋り方に笑いを堪えてそう言った。
「いやね前々から話したいことがあって…車に乗ってから話すよ」
と焦らしてくる朝陽さん。
わかりましたとだけいって電話を切り、
なんだろう…と思いながら荷物を持ってお疲れ様ですと言って退勤した後外に出ると車から降りて待って下さってた朝陽さんを見つけた。
「お疲れ様です…あっこれミルクティーとカフェオレどっちがいいですか?甘いの好きって言ってたから…」
やっぱりよそよそしい普段なら使わない敬語でワタシに何故か緊張した様子で飲み物を差し出してくれたので
ありがとうございますと言ってミルクティーの方を頂戴した。
そのままの空気で朝陽の車の助手席に乗り込み走り始めた車内で気になっていた話を切り出す事にした。
「それで話しって何だったんですか?」
「それ!!!それだよ!!!」
と急に声を大きくする朝陽さん、どうしたの…?情緒不安定…?なんて笑いが出そうだったけど私は疑問符で返す。
「それって…どれでしょう…?」
「その敬語だよ!そろそろ辞めない?俺らそこそこ仲良くなったと思うしさ…それに同い年だし!」
「え…そんな事ですか?」
「そんな事ってなんだよ!勇気出して言ったのに…」
あぁ…だから緊張してる様子だったのか。
ていうかそんなに緊張する事?この人の思考は少し掴めないなと思ってたけど
ヒサちゃんが前に「朝陽は女慣れしてない」
なんて言ってたのを思い出した。
出会った日はあんな感じだったのに…
と思う心と朝陽さんの不器用さに思わず笑ってしまった。
「じゃあ今からタメ口で話しますね!」
「おー!よーいスタート!」
と緊張もほぐれいつもの朝陽さんに戻った様でほっとした
「それで絶景って後どれくらいで着くの?」
「あと少しだよ、あと5分かな」
「そっか…カメラマンさんのチョイスだから素敵な景色なんだろうなぁ…」
「めちゃくちゃに綺麗だよ、正しく絶景だね」
「そっか楽しみ!それで…タメ口だけど、どう?」
「可愛い」
そう小さな声でポツリと聞こえたその言葉は私に胸を高鳴らせた後に照れが上回ってしまった。
「運転してる朝陽さんもかっこいい」
そう返してみてリアクションを見てみようと思ったけど
「あ、着いたよなんて流された」
降りてみて星空を仰ぐあまりに絶景すぎてしばらく見惚れてしまっていた様で
「おーい聞いてる??波音ちゃーん!」
なんて声で我に帰る。
「あっごめん…何か言ってた?」
「今から伝えたい事があるので聞いて貰えますか…?」
と真剣な面持ちの朝陽さん…もしかしてと思った瞬間、彼はゴクリと唾を飲み込み話を続ける。
「波音ちゃんの事が俺好きみたいです…いや絶対好き…なんか一緒にいると離れたくないなってなります…そうなんです…。」
ぎこちないけど気持ちが伝わって来る言葉
そんな言葉達に今度は私が言葉を重ねる。
「ワタシも!多分朝陽さんが思ってるよりずっとずっと好き。」
そう本音を言った。
「じゃあ両想いってこと…!?」
「そうだね」
「えーー!?奇跡じゃん!これってどれくらいの確率!?」
「2分の1かな…?」
なんてテキトーに言葉を返してみた、確率なんてどうでもよくて両想いって事が嬉しかったから。
「ニブイチかーー!やったね!!じゃあ付き合ってくれるって事?」
「もちろん、よろしくお願いします」
「あっえっと…よろしくお願いします!!」
そうして私達は、星空の下で恋人同士になった。
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