第6話 予想外の結末
「それからというもの、私の心の中にはいつも秋村くんがいました。教室でみなさんのお悩み相談に乗る秋村くんを見掛けるたびに頑張ろうって思えて、心が温かくなって……。いつの間にか、貴方の姿ばかり目で追っている自分がいました」
「春川さん…………」
「好きに、なっていたんです……!」
春川さんは上目遣いで恥ずかしそうに、しかし誠実に俺に向き合っていた。その可愛らしい姿を見るだけで俺の心はまるで締め付けられるように苦しく、だけどどこか心地良さがあって…………。
思わず俺は戸惑う。おそらくこれは、"嬉しい"という感情が心から溢れ出たからなのだろう。痛みは好意から生まれることもあるのだと初めて知った。
「だ、だから秋村くんっ!」
「は、はいっ……!」
「私と―――っ!」
意を決したように春川さんが次の言葉を紡ごうとしたその瞬間―――、近くから声が聞こえた。
「………………待って。―――ちょっと待ってッ!!」
「ひゃっ!?」
「す、鈴音さん……!? どうしてここに……?」
すぐ側で聞こえたその大きな声に振り向くと、俺と春川さんのすぐ近くにはなんと雪音さんが立っていた。雪音さんは肩を震わせながら俯いており表情は良く見えない。だけど、その背後では申し訳なさそうに笑みを浮かべて手の平を合わせる浩太の姿があった。
たぶん心配してくれた二人が、こっそりと俺と春川さんの相談する光景を覗き見ようとしたのだろう。春川さんが言いかけた言葉はひとまず置いておいて、俺はまず近くにいる雪音さんに声を掛けようとした。けれど……。
彼女の肩に手を置こうとした瞬間、一筋の光るモノが地面に零れ落ちた。
「やだよぉ……っ。そんなの、ズルい……!」
「え……っ!?」
「なんで今更……っ、私の方が近いのに……っ!! 私だって……!」
「…………鈴原さん、やっぱり貴女」
俺はぼろぼろと頬を伝う雪音さんの涙に驚く中、静かにぽつりと呟いた春川さんと泣き腫らした雪音さんの視線が交差する。
え、どうして雪音さんが泣いて……!? ……でも何気に雪音さんがここまで感情を表に出したのって初めてじゃないか? 入学時に知り合った浩太よりもほんの少し後に一緒にいるようになった彼女だけど、少なくとも俺はこんな感情をむき出しにした表情は見たことないぞ?
いきなりの展開に理解が追い付かず置いてけぼりになる俺。この状況をどうするべきか頭を悩ませていたが、先に言葉を発したのは春川さんだった。
「…………すみません秋村くん。先程の私が言った告白、やっぱり無かったことにしてください」
「へ……?」
「その代わり―――私と、これから友達になってくれませんか?」
彼女はいつも教室で見るような可憐な笑みで微笑みかける。
一方の俺は初恋の相手である春川さんの告白が突然ナシになったことで俺は呆然。よく"女心は秋の空"とも言うけど、相談、告白ときて『友達』と口にしたということは彼女の中で何か心境の変化があったのだろうか。
なにはともあれ、何故か春川さんの吹っ切れたような表情を見た俺は気の抜けた返事しか出来なかった。
「あ、うん。これからよろしく……?」
「はいっ!
とびきりの弾けたような笑みを浮かべる春川さん。なにそれ可愛い。
思わず『ん゛ッ』とした表情になっていると、彼女は近くに佇んでいた雪音さんに身体の正面を向けた。そして落ち着いた声でこう告げる。
「…………さて、鈴原さん。これから二人だけでお話しましょうか?」
「っ、……何? 情けのつもり?」
「ふふっ、情けなんてとんでもない。ただこれからのことを、少しだけ」
「……………!」
雪音さんは目を見開く。そして赤く濡れそぼった瞳をゴシゴシと制服の袖で拭うと、小さくこくんと頷いた。
「……ん」
「ふふふっ。―――それでは秋村くん、今日は私の我儘に付き合って頂いてありがとうございました。私と鈴原さんはまだ
「え、ちょ、ちょっと―――!」
「ほら千歳、ここは彼女の言う通りにしてさっさと帰るぞ。それじゃあまた明日春川さん!! じゃあな!!」
「はい、また明日お会いしましょう松岡くん、秋村くん! お気を付けてお帰り下さいっ!」
「じゃね」
満面の笑みでにこやかな表情をした春川さんと、ジトッとした瞳の無表情の雪音さん。俺は二人に見送られながら、今まで空気になっていた浩太に慌てて背中を押されて屋上を後にしたのだった。
こうして俺は、初恋で好きな人である春川さんからの恋愛相談兼告白の末、彼女と友達になった。青春という名の新たな日常が、幕を上げる―――!
……うーん、これなんてラノベ?
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はい、これにてプロローグ終了です!
次回は第一章を投稿していきますー(/・ω・)/
もし「続きが気になる!」「面白そう!」と思って頂ければ是非ともフォローや感想、レビュー、★評価お待ちしております!
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