2月21日
家で小説を書くとき、俺はいつも自分でコーヒーと淹れる。といってもそんなに本格的なものではなく、店で挽いてもらった豆をフィルターに入れて、お湯をゆっくりと注ぐだけだ。
その豆が無くなったので、しぶしぶ家を出ることにした。今日は本当は家にこもって作業をしようと思っていたのにだ。
そうは言っても、行きつけのコーヒー店は歩いて十分くらいだ。外は少々寒かったが、一昨日ほどではなかった。
いつも買っているのは「ブルーマウンテンブレンド」というものだ。
俺はコーヒーをこよなく愛しているが、その産地や種類には疎い。勉強しようと思ったこともあるが、あまりにも種類が膨大でやる気を失った。若いころならそれでも迷わず習得しようとしただろうが、年には勝てない。
ブルーマウンテンブレンドを買っている理由は、それが先代の店主のおすすめだったからだ。「とにかくおいしいものをくれ」と言ったら出てきたのがこれだった。
それ以来、五年くらいになるだろうか。店主が退き、彼の息子にその座を譲ってからも、俺はずっとブルーマウンテンブレンドを買っている。
ところが今日は、俺が店に入るなり、息子のほうが声をかけてきた。曰く、俺が絶対に気に入る豆が入荷したのだと。息子がここまで熱心に語っているのを俺は初めて見た。
試飲までさせてくれるというのだから、俺は大人しく飲んでみた。
結果は言うまでもない。非常においしかった。今まで飲んでいたものとは何か違う。苦みが上品な気がする。香り高い気がする。コクがより鮮明に感じる。
とにかく、店主が言う通り、俺はその豆を気に入った。今日は良い買い物ができた。
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