2月19日
今日は用事があったから、珍しく昼前には起きて、着替えて家を出た。外は久しぶりに雪が降っていた。細雪だった。
駅までは十分くらい歩かなければならない。結構ぎりぎりだったから、俺は小走りで急いだ。
散歩のときにいつも通っている橋があった。川幅五メートルくらいの小川にかかる小さな橋だ。その川辺には、春になれば満開に咲く桜が植えてあるが、この季節はただたださみしいばかりであった。
しかしなぜか今日は、それが非常に詩的なもののように見えた。小さな川と枯れ桜、細かい雪の、その三つの要素だけだ。この三つだけなのに、文字通り一本詩が書けると思った。
そこで俺は急ぐ足を止め、しばし橋の欄干に腰掛け、景色を眺めた。
川の水は時々、どぽどぽという小気味良い音を立てて流れ、細雪はコートにくっつき、すぐに溶ける。花も葉も無い桜の下を、散歩しているであろう老人が、杖をつきながら歩く。
どのくらいそうしていただろうか。俺ははっと我に返り、駅へ急いだ。腕時計を見ると、乗る予定だった電車が出るまであと二分しかなかった。
遅刻は確定した。
相手には相当嫌な顔をされ、俺は謝り倒しとなったが、何も問題ない。
今日は良い一日だった。
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