2月15日
今日は行きつけだったカフェに、久しぶりに行った。
家から歩いて五分程度、店は入り組んだ路地の中にあり、客は少ない。基本的には俺のような近所の常連客しかいない。
おおよそ三か月振りの訪問だった。内装は以前と全く変わらなかった。カウンター席が五つと、四人掛けのテーブル席が二つ、二人掛けのテーブル席が二つ。
ただ、以前と変わっていたところもある。前はマスターとその妻で、老夫婦二人でカウンターに立っていたのだが、今日は夫人の姿が見当たらなかった。その代わりか、若い女子店員がマスターのサポートをしていた。
歳が歳だったから、あまりこういうことは聞くべきではないようにも思えたが、一応常連なのだからマスターとの信頼関係はある程度はあるはずだと思って、勇気を出して聞いてみた。
「マスター、奥さんはどうなさったんですか」
マスターは嫌な顔一つすることなく、「いやぁ、ひと月前くらいに病気で倒れましてね、そこからずっと入院しているんですわ」と言った。
「慣れないながらもインターネットでバイトを募集しましてね。そしたら近くの大学のこの子が応募してくれたんですわ。時給もよくないのに、なんで応募してくれたのって聞いたら、『こういう、おじいちゃんみたいなマスターが一人で細々やってる喫茶店で働くのが夢だった』って言うんですわ。それならこっちとしても有り難いし、まあチェーンのカフェよりは楽でしょうけど。でも明るくていい子だし、要領がいいかって聞かれると、それはあんまりなんですけどねぇ、ハハ。」
マスターは全く迷惑ではなさそうな笑顔を見せた。
多分、マスターから見たらバイトの彼女は丁度、孫くらいの年齢だ。かわいくて仕方がないのだろう。
そして彼女もまた、この店の雰囲気によく馴染んでいる。ラッピングの作業をマスターに教えられながらなんとかやっていた。きっと不器用なのだろう。なかなかうまくできないでいた。それでも口をキュッと結び、何とか完成させようとしていた。その様子はなかなか可愛らしかった。
マスターのコーヒーはいつもと変わらずおいしかった。
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