2月12日

 春はあけぼの、夏は夜、秋は夕暮れ、冬はつとめてと昔の人は言ったが、大嘘である。


 春は昼つ方、夏は夕暮れ、秋は夕暮れ、冬も夕暮れ。


 これが正解だ。


 春の昼時は言うまでもない。風がそよぎ、空気は温かく、川辺には桜並木、ベンチにかかる木漏れ日、散歩する人々、花びらの浮かぶ水たまり。


 夏は夕暮れ。これは何日か前に書いた気がする。同じことを書くのも忍びないので割愛しよう。でも、夏の夕暮れの素晴らしさは分かるはずだ。


 秋は夕暮れ。これは昔も今も変わらないらしい。秋の日暮れは一年で最も美しい太陽だ。並木道には枯れ葉が積もっている。一日の終わりが来るのが早く感じる。次第に寒くなってくる。五時のサイレンが鳴る。


 冬も夕暮れだ。学校を終え家路につく児童学生、陽光に照らされた風で靡くマフラー、お揃いのロングコートを着たカップル、温かい家。


 昔と今ではこうも感覚が変わってしまった。いいや、俺が朝起きれないから、その良さに気づいていないだけかもしれない。

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