2月6日

 甘い恋をする時期というものは恐らく誰にでもある。それは小学生のときでも、中坊でも、いつだっていい。俺にもそんな時期はあった。


 何日か前にも書いた気がするが、俺はその時好きだった人に近くの公園で告白した。拍子抜けなことに、それはうまくいった。その時は、俺は幸せの絶頂にいたといっていい。


 その人との付き合いは非常に長かった。卒業して、別々の高校に行っても別れなかった。大学でも問題なかった。このまま生涯を添い遂げると思っていた。


 ある春の日だった。その日々は唐突に失われた。彼女は薄っぺらい粉塵と化した。彼女はその人生で全くなにも遺さなかったように感じた。彼女はこの世界に、その痕跡を何も残さなかった。だから、せめて俺だけは、彼女を覚えておいてやらないと、不憫でならなかった。


 そうして、物書きをはじめた。彼女がこの世界にいたという標をのこすために。もしも俺がいなくなっても、彼女の痕は残るように。


 少なくとも初志は、そうだった。

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