2月5日
早く夏が来てほしい。もう冬はいらない。
などと思うのは夏も冬も同じだ。夏になるとその暑さにうんざりして、早く冬よ来いと願う。冬はその逆ということだ。
それでも今は、冬より夏のほうが良いものだろうと思う。夏は自然をそこかしこに感じられる。夏は人々が陽気になる。夏はセンチメンタルで、しっとりとした空気だ。夏の夕暮れには哀愁がある。夏の朝は活気に満ちている。
夏は、その要素すべてが心動かす材料を持ち合わせている。朝も昼も夕刻も夜も、夏の温度は厳しいようでやさしい。
特に夏の夕刻といったらたまらないものがある。一年で一番穏やかで、時間がゆっくり流れている。夕日に照らされながら土手を歩く人、河原で遊ぶ少年たち、学校のグラウンドを走る野球部の青年、校内で演奏する吹奏楽部員、ゆっくりと家路につく老夫婦、電線にとまって鳴く烏、どこにいても聞こえる蝉の声、市民プールで遊び疲れ、友達と自販機でアイスを買う小学生、街の薄明かり。
人間のどんな行動をとってみてもそれはすばらしく文化的で意味があって印象的で感傷的なものに感じる、それが夏の夕刻だ。
もしもいますぐに、夏の夕刻が眼前に現れたら、俺は泣いてしまうと思う。
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