2月4日

 俺は何がしたいんだろう。何をすれば、この心は満たされるのか。


 日々家に閉じこもって、物書きごっこをしている。一向にいいものは書けないくせにだ。貯金は食いつぶすばかり。何か仕事をする気力もない。どっかの文学賞で一発当てて職業作家になってやろうという魂胆で、ものを書いている。


 作家になれればこの心は満たされるだろうか。作家になって、自分のネームバリューができれば、財布を満たすことは簡単だ。駄文だろうがなんだろうが適当に書いておけば、愚かな読者どもは「俺」という名前の前に盲目になり、どんな文章でもありがたがって購入し、読む。だから一回、大当たりさえすれば、銀行口座は満たされる。じゃあ心は?


 心はどこまでいっても満たされないように感じる。心を満たすには、あまりにも多くを失いすぎたと思う。


 心は器だ。器を満たすには、蛇口をひねって水をいれなければならない。水は欲求だ。蛇口をひねることは即ち努力だ。


 だが、器に穴が開いていたら、どれだけ蛇口をひねって水を流そうとも満ちることはない。

 蛇口をひねる前に、穴をふさがなければならない。でも、ふさぎ方が分からなかったら?

 買い替えるしかないのだろうか。

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