2月3日

 小学生の時に、将来の夢というものをだれしも考える。男子だったら、たいていはサッカー選手とか野球選手、もしくは医者が多いのではないだろうか。女子はどうなんだろう。よくわからない。


 果たして、「将来は野球選手になる」と宣言した少年の内、何人がドラフトで選ばれただろうか。それ以前に、何人が高校や大学まで野球を続けただろうか。少年野球児であっても中学では野球部に入らないやつだっている。俺がそうだった。

 無論、「野球選手になる」と宣言していない者が野球選手になることは稀だろう。プロになるにはほとんど小学生の時から野球をしていないと駄目で、野球をしている少年は、もう全てと言って差し支えないほど、「将来の夢は何?」と聞かれたら「プロ野球選手!」とこたえるからだ。サッカーをしている少年は、彼自身が上手か否かに関わらず、「将来はサッカー選手になる」とこたえる。


 本気で成ると信じ込んで「なる!」という少年もいれば、心のどこかで無理だと思い、そもそもそうなりたいのかと疑問に思いながらも習い事をさせてもらっている親の手前では忖度をして「なる...」という少年もいる。俺は後者だった。


 前者に当てはまる友達がいた。同じ少年野球チームに入っていて、2番ショートのレギュラーだった。そいつはいつでもどこでも、「夢は?」と聞かれたら条件反射的に「プロ野球選手!」と返していた。結局、野球は高校まで続けた。


 だが、そいつには野球しかなかった。そいつは球団から才能を発見されるほどの選手にはなれず、野球人生を終えた。


 そいつには野球しかなかったのだから、やつはその人生の根幹を失った。そういう人間がどうなるかはもう察しがつくものだ。


 やつは良い奴だったから、その時は悲しかった。

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