1月30日

 俺が小説を書き始めたきっかけは何だっけと考えた。


 本当に、なんだっけといったかんじだ。思い出せない。

 考えられるのは、「~にあこがれて」というパターン。でも、俺は特にあこがれている作家はいない。だからこれは違うと思う。


 そもそも俺が書き始めたのはいつだったか。たしか高校生の時だ。処女作の題名すら思い出せないが、これだけは言える。それは、しょうもない恋愛小説だったと思う。

 俺でも人並みに恋はするものだった。ここでは相手の名前をAとしておこう。俺はAが好きだった。そこで俺は、俺とAが付き合い、交際するという物語を小説にした。


 ここに書くだけで恥ずかしくなってくるが、俺はそういう小説を書いた。それが恐らく処女作だ。


 一方で、不思議なことに、現実は小説の通りに進んだ。小説の中で俺は、近くの公園でAに告白した。現実でもそうだった。夕方、たまたま一緒に帰ることになって、寄り道した公園で俺はAに告白した。

 あるいは、俺は小説の中で、一緒の大学に合格するという妄想を書いた。それもまた現実となった。俺とAの志望校がたまたま一緒で、お互い頑張って勉強し、同じ大学の同じ学部に進学した。


 あれは、今思い返してみてもふしぎなことだった。

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