1月27日
今日はずっと家にいたから、特段書くことが無い。ので、昔話をしようと思う。
ある男には、妻がいた。子供が一人いた。息子だった。猫を飼っていた。メスの、生まれて間もないころに捨てられてあった黒猫を保護して、飼っていたのだ。
息子はどんどん成長していった。猫はそれよりも成長が早く、よきお姉さんという風だった。息子は幼稚園に入る歳になった。男と妻は喜んだ。
息子はどんどん成長していった。単語のみの発音ではなく、きちんと文章構成をして「会話」ができるほどに。
息子は気になることを言い始めた。「かいぶつ、かいぶつ」と。
男は意味が理解できなかった。だから、息子にその意味を聴いた。息子はひどくおびえていた。
男は妻にそのことを相談した。妻はひどくおびえていた。
猫はもう寝たのか、目の届く範囲にはいなかった。
男はどうにも理解できぬまま、仕事のために寝ることとした。
男は起床し、居間へと向かった。しかしそこには、妻の姿はなかった。普段ならキッチンに立ってコーヒーを淹れている妻の姿があった。現在はその姿は皆目無かった。
男は息子の姿も見ていないことに気が付いた。家じゅうを探したが、妻と息子、どちらもいなかった。家出かと思われたが、妻の財布も衣服も、スーツケースも家の中にあった。
呆然と立ち尽くす男の足元に、小さな影が歩み寄った。その影は「にゃぁ」と小さく鳴いてみせた。
男は混乱したが、仕事があった。食パンを二切れ取り出し、トースターに入れ、牛乳を注ぎ、背広に着替え、家を出た。
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