1月26日

 最近の世の傾向として、破滅的なものを好むものがあると感じる。小説においてもだ。


 主人公がいて、その人が、いわゆる一般的な生活から転がり落ちていって破滅への道を歩むというプロットだ。

 「破滅」とは、死でもいいし、戦争でもいいし、廃人でもいいし、闇落ちでもいい。それらすべて含めて、俺は「破滅」と呼んでいる。


 その中でも特に多いのが、「死」の破滅である。とりあえず「死」んでおけば感動的な物語になるというのは、間違ってはいない。死とは、その要素そのものだけで物語の確固たる軸になり得るからだ。


 俺はこの言葉を信じている。

 「ドラマチックに人が死ぬストーリーって売れるじゃないですか」


 どこかで聞いた言葉だ。どこかはおぼえていない。でも、この言葉は真だ。


 俺は別に、昨今の「死」ブームを否定したいわけじゃない。実際、俺もそういう作品を書いたことがある。主人公の想い人を俺が殺した。


 ただ言いたいのは、「死」じゃない、「破滅」じゃない作者のメッセージが何かあるんじゃないだろうかということだ。作者が、物語の構成上致し方なく「死の破滅」の型を採用せざるを得なかったが、ほんとうは「死」を見てほしいんじゃなくて別の物を見てほしいんじゃないか。


 いいや、これは作家論的過ぎるかもしれない。俺はどちらかというと読者論を支持しているから、それとは矛盾するかもしれない。

 それでも、そんな俺がそう考えるほど死があふれかえっている。これは読者自身が受け取り方を変えるしかないのかもしれない。

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