1月17日

 印象派のモネの絵画が、俺は好きだ。


 適当にインスタをいじっていたら、モネの「日傘をさす女」がでてきた。俺はこの絵を見るたび、三十秒ほど思考が立ち止まる。そして我に返る。続いてそのタッチを観察する。


 俺は絵画には詳しくないが、素人なりに分析はする。まず、この絵は筆の短いタッチが特徴だ。筆先をちょんちょんと触れさせるだけにとどめていて、そこから幻想的雰囲気が生まれている。

 次に構図を分析する。まず目を引くのは中央に立つ白いドレスを着た女性だ。絵の題名通り、その女性は日傘をさしている。しかし重要なのは女性ではなく、彼女の右側に立っている小さい男児だ。


 写真で例えるなら、女性はすっくと立って、ちゃんとカメラのほうを向いている。だが男児のほうはどうか。感覚的な問題かもしれないが、カメラから目線を、彼から見て右側に、はずしているようだ。どうしてこう感じるのか、わからない。


 ここまで長くなったが、俺はこのカメラの撮影者に自分を投影してしまう。

 

 この光景は、俺の有り得た未来だったのだ。妻とこども。青空とそよ風。太陽と影、緑、雲。すべて。この光景のすべてが、この光景を写真に収めるのは、この俺の手だったかもしれなかった。


 すべてはもう遅い。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る