1月16日

 俺はコーヒーが好きだ。今日も二杯飲んだ。


 コーヒーは美学であり、哲学であり、芸術だ。香り・コク・苦み・甘み。全てが調和したものが、一杯のコーヒーだ。


 なぜこんなことをはじめに書いたか。俺が今日、缶コーヒーに感動したからだ。


 今まで俺は、缶コーヒーはまずいと思っていた。いや、その偏見が晴れたいまでも不味い缶コーヒーはある。要は種類の問題だ。

 しかし俺は今日まで、缶コーヒーという缶コーヒーはすべて不味いと思っていた。種類に関わらず。そこが昨日と今日で決定的に違うところだ。


 昨日まで、コーヒーを呑むならば自分で淹れるか、喫茶店のものを呑むかの二択であった。当然、喫茶店のもののほうが好みだ。店ごとに、淹れる人ごとにその味は確実に変わるから、その違いを楽しむことができるし、何よりきちんとした設備が整っている。我が家にはドリッパーとフィルターがあるくらいなのだから、それと比べたら大違いだろう。


 しかし今日は、機会があって、たまたま缶コーヒーを買った。自販機で110円。もちろん温かいほうを選ぶ。

 偏狭な偏見のもとにあった缶コーヒーを買うのは当然ためらわれたが、それしか選択せざるを得なかったのだから仕方なかった。その心持のまま一口つける。


 これのなんと芳醇なことか。香りは華やいでいるし、苦みも美しい。このコーヒーは官能だ。


 それが本日、最も感動したことだ。よもや缶コーヒー一本で小説がひとつくらい書けてしまいそうだ。


 そうだ、俺は書かなければならない。コーヒーを語っている場合ではない。

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