1月15日

 さて、今日から鬱憤晴らしだ。


 俺は今日、家に帰りついて何の気なしにテレビをつけた。そうしたら画面の中からうるせぇエレキギターのキィキィ音が叫びだしてきた。


 エレキなんてものを発明した奴は何もわかってなかったに違いない。あんなにうるせぇ楽器があってたまるか。いっそのこと、画面の中の目が隠れるくらいまで髪を伸ばしていやがるこの男からそれをぶんどって目の前で床に打ち付けてやりたいくらいだ。

 そう、俺は最近の、耳をつんざくような音楽を作るバンドが大嫌いだ。


 音楽は芸術の一つだ。それは問題ない。いや、それについては大いに賛成だ。だがそれが何なのかわかってもいないのに一丁前に「個性」を語っていやがるヒョロヒョロした若輩者がうるせぇ楽器を掻いて「愛」や「平和」を叫んでいる。こんなもののどこが芸術なんだ。ただただ退廃的だ。芸術と名乗るにはあまりにもおこがましい。


 そんなやつらが、大金を手にしている。印税からテレビの出演料まで、手厚く報酬を受け取っている。

 俺はどうだ。俺はこんなにも才能に満ちている。なのに何故、だれも俺に声をかけない。


 世の中は金だ。全て金だ。絶対に俺は、俺の小説で莫大な金を自分のものにする。この腐れ音楽家どもの三倍はもらっていいはずだ。少なくともそれだけこいつらよりは芸術に寄与している。文化に寄与している。社会に寄与している。


 一息おいて見返したら、一日の最後に金!金!なんて叫んでいる。がめつい根性かもしれないと少々反省したが、修正はしないでおく。今日はもう寝る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る