第9話 サナの決意と甘えさせ宣言
昼に堂々とS宣言をされてしまった。
その日は、放課後になるまでが苦痛で仕方が無い状況に陥っていた。
それもホームルームを終えるまで。
さすがに女子たちのひそひそ話を永遠に聞かされるのは、精神が持たない。
サナは学年違いだからまだいいとしても、俺を狙っていた女子たちの嘲笑と冷笑は、予想以上にダメージを喰らうことになってしまった。
その足で家に帰って来た俺だったが、サナは俺の心の苦しみを知ってか知らずか、訳の分からないことを言いに部屋に来た。
「ええ!? い、今なんと?」
「だからぁ~、しゅんぺーには甘さを与えなきゃダメだったことに気付いたんだよ。言いたいことは、何となく分かるよね?」
(どうしよう、さっぱり分からない)
あれだけSなことを言っておきながら、何故に甘えを与えようとしているのか。
先にムチで引っ叩かれたのに、後から甘えを与えられるとか、サナは俺をMだと勘違いしているのでは。
「――つまり、いじめずに甘やかしてくれる感じですかね?」
「うんうん。その通りです! お昼のアレを見て気付いたんだよね」
「何に気付いたって?」
「しゅんぺーは女子たちをはべらせたかった! でも、女子たちに囲まれて責められて、ハーレム計画を失敗しちゃった。女子たちは切り替えが早すぎて、みんなでいじめにシフトしたんだけど……サナが出て来たからやめたんだよ。そうだよね?」
ハーレム計画を立てた覚えは無い。そしていじめられてもいなかった――はず。
サナのあの発言で引いていたというのが正しい。
しかしいいように変換しているように聞こえるので、頷いておく。
「そりゃあ、サナが俺をいじめるって言い出したら、やめるだろ」
「そう! でも、様子を見ていたから分かるんだけど、しゅんぺーは女子たちに甘えたがっていた! だけど上手く行かなかった。やっぱり、男子一人に対し女子が三人以上は無理だったんだよ」
訳も分からずに囲まれたというだけのことなのに、妄想が過ぎる。
いつから俺が甘えたがり野郎に認定されたのか。
「まぁ、うん」
「だから、サナはもう決めたよ! しゅんぺーを半永久的に甘えさせるって!」
「――へっ?」
「そういうわけです。だからいっぱいいっぱい、サナに甘えていいんだよ? 何か困ったことがあったらサナの胸に飛び込んでもいいし、添い寝もしてあげるし、わがままだってたくさん聞いてあげる! もうこれで行くって決めた!」
「い、いや、彼氏のフリって意味だよね?」
妹でありながら、学校や外では妹のわがままを聞いて彼氏のフリをしてあげている。それなのに、何故か立場が逆になっているのはおかしい。
これは兄としてビシッと言わなければ駄目だ。
「んーん。それも、もういいよ? 別に彼氏って見せつけなくても、これからは目一杯甘やかしまくるの! そしたら、彼氏のフリなんかしてもらわなくても、わたしに近付いても来なくなるわけだし」
「――ということは、妹と兄の関係に戻る……?」
「うん!」
そうか、これで俺の役目も終わるのか。
「じゃあ、明日からは兄と妹の……」
「禁断の関係の始まり……だね!」
「いやいや、始めないって!」
「甘やかすのを見せつけまくってあげるね? しゅんぺーお兄ちゃん!」
――やはりサナは可愛い、可愛すぎたんだ。
彼氏のフリから脱出出来たと思っていたのに、明日からは別の意味で注目を浴びまくる日々が始まる――
彼氏のフリをしてと言われても。~妹のサナが今日も可愛すぎる~ 遥 かずら @hkz7
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