第43話 ユウトに敗北の二文字はない②
黒髪パッツン兵士こと、サマーソルト王国軍は、丘を駆け上がる。
すると、草むらに撒いて置いた、マキビシで足を怪我する...
サマーソルト士とは、足技の達人である。そんな兵士が足を怪我したらどうなるか...
更には、岩を転がして、落としてゆく。
「うぎゃ〜」
岩の犠牲になる兵もいれば、突破してくるサマーソルト兵もいた。
彼らには、千名のナルシス軍で各個撃破である。前衛が盾を用いて、回し蹴りを受けつつ、中衛が斬りこみ、城から弓矢兵と魔法士が魔法でトドメをさしていく。
・
・
・
段々と囮の千名の部下達に疲れが見えはじめ、怪我人も出始めた。
ユウトは自ら馬に乗りながら、新たに千名の兵士を出撃させると、糸を使い、サマーソルト兵士をぐるぐる巻にしていく。
もちろん特殊糸である為に、一度絡まるとなかなか取れない。
右手に刀、左手で糸を使い、最前線で敵を薙ぎ倒していく。
ザク! グル! ブシャ! シュルルルル〜...
「オラオラオラ〜死にたくなければ引きやがれ〜」
顔も服も返り血だらけになりながらも、
ユウトは一歩も引かず、斬りきざみまくる。
王自らの出陣に、味方の士気も奮い立つ。
やはり、心強いらしい。
ユウトはあたりの時間の流れが遅い事に気がついた。いや違う!! 俺の知覚と素早さが早いのだ。
サマーソルト兵の回し蹴りを掻い潜りながら、剣術と糸術で無双する。
右手と左手はまるで別々の動きをしているが、それに合わせるように馬まで走らせるのだ。
「これが、元勇者パーティのユウトか...」
パッツン将軍はユウトの武勇に舌を巻く。
しかし、見惚れている場合ではない。
総大将を倒せば勝ちなのだ!
「総大将が最前線にいるのに、まだ撃ちとれないのか? 全員奴を狙え!!」
サマーソルト王国兵は、ユウトに群がりはじめる。ユウトは刀をしまい、奥義の準備に入る。
左右五本ずつ、最高に硬い糸を取り出し、馬から飛び降りて、踊り乱れる。
「南斗のワルツ」
視認できない程の高速回転を繰り返して、
左右五本ずつの糸が、サマーソルト王国兵を
斬糸していく。
それはまるで、刃物を両手に複数持ち、切り刻んでいるかの様であった。
ユウトの周りには糸で切り刻まれた兵士の骸が山積みになっていく。
サマーソルト兵にとってはまるで、悪魔を相手にしている様で、次第に兵士が逃げ出していく...
「逃げるな〜奴を仕留めろ〜」
パッツン将軍の指示は虚しく空をきる。
ナルシス王国軍も王の奮戦に応えるかの如く、動きが更に良くなる。
すると、黄色い旗が上がる。
ユウトは馬に乗り、兵士に号令を出す。
「ポルポ城に一次退却!」
ナルシス王国軍は、皆、城に篭ってしまった。
押されていた、サマーソルト王国軍は、攻城の構えをとる。
パッツン将軍もナルシス王国軍の鮮やかな引き際を不審に思ったが、敵の策がわからない。
ナルシス王国軍はポルポ城の外壁の石の柵を取り払う。
すると、大量の水が、丘の下へ流れてゆく。ユウトはすかさず指示を出す。
「撃て〜!!」
『サンダードン』
魔法士二百名による一斉の雷の魔法が、水の流れを伝い、一気にサマーソルト王国軍全員に雷と衝撃波のダメージを負わせる。
皆、痺れて倒れてしまった。
「雑魚の首入らぬ!! 将軍の首一つ!!
ゆけ〜」
好機とばかりに、ユウトは手勢ニ千の軍勢で、サマーソルト王国軍本陣へ攻め込んだ。
「あわわわわ...」
パッツン将軍は痺れて動けない。
ユウトはパッツン将軍の首を刎ね飛ばした。
すると、サマーソルト王国軍は白旗を掲げたのだった。
しかし、ナルシス兵士は、収まらない、何せ、ナルシス音楽祭の午後の部は、女性アーティスト特集を組まれていたからだ。
「ガルランのマリンちゃんの演奏楽しみにしてたのに...」
「俺はアースのプルンちゃんだよ...」
サマーソルト軍襲来のせいで、
推しグループの生演奏を中止された兵達は怒りまくっていたのだった。
「まぁまた開催すれば良い話ではないか」
「私達はね! 好きなバンドの為にファンも振り付けまで考えて練習していたんです」
えっ? ファンが振り付け? 何だそれ?
物凄く興味が湧いたので、ナルシス音楽祭の続きを、宴で再開しようと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます