第42話 ユウトに敗北の二文字はない①
まぁ、サマーソルト国に恨まれる理由ならある。
以前の戦いで、途中までサマーソルト王国軍に味方しておきながら、最後は漁夫の利を狙ったのだから...
しかし、待ってほしい。
蹴り技しかない、サマーソルト王国軍が四万来ようが、怖くなどないのに、家臣達は何を心配しているのか?
「楽な戦いとまではいかないが、
まぁ大丈夫だろ!」
こんな空気だからこそどっしり構える。
因みに策ならある。
問題は、すぐ近くの隣国だから、スピードが速いのだ。こちらの策が仕掛け終わるまで待ってはくれないだろう。
時間稼ぎの為、ユウト自ら、最前線で指揮する必要があった。
「兵はどれだけ回せる?」
「五千程でしたら...」
エドガー国務卿は、渋い顔で答えた。
ユウトは皆を奮い立たせる!!
「私は、魔王戦でも戦でも負けたことがない!! 皆安心しろ!! 必ず勝つ! だから私を信じろ!」
「おー!!」
「ジジ、バニラは例の作戦で!」
「イエス マイロード」
「エドガー国務卿は、この書状を魔法王へお願いしますね」
エドガー国務卿は、心配いらない理由がわかったらしい。
政略結婚をした、魔法王国とナルシス王国は、血の繋がりのある同盟国である。
ナルシス王国に刃を向ける事は、世界最大の国力の魔法王国を敵にする事と同義である。
まぁ魔法王国軍には、攻める姿勢だけ見せて貰えれば良い。
それだけで、本土防衛に軍を残す筈だ。
後はスパイを使い、どれだけ撹乱出来るかで時間が生まれる筈だ。
「スパイ達は、サマーソルト国で、遊牧王国がサマーソルト国を襲うとデマを流せ!!」
「御意」
前魔法王の母は、遊牧王国出身である。
可能性はなくはない話である。
「全軍、ポルポ城へ急ぎ出陣じゃ」
俺を誰だと思っている!! 智謀で人類を勝利に導いた男だぞ、俺が出向けばそこには勝利の二文字しかない!!
我が国に歯向かうなど、百年早いわ!!
ユウトは戦力差八倍でもなんのそのであった。プリーモはそんな偉大な父の背中を見つめる。
「プリーモ! 俺の背中を見て育てよ!」
「はい! 父様」
しかし、この台詞では、タンタン師匠とまるで変わらない。
育ての親とは言え、親に似るものらしい。タンタン師匠もいつも堂々としていた。
軍やスパイ関係者が慌ただしく動き出す。
全ては時間との勝負である。
ユウトは、酒を呑むと舞を披露する。
剣舞である。
ひと汗かいたユウトは、荷物を馬車に詰め込むと一番乗りでポルポ城へ向かう。
軍は用意がある為についていけない。
サマーソルト王国軍が、最短距離でナルシス国に進軍するなら、魔物が多数出る魔の森を通らないといけない。
そうすると、犠牲者が多数でる。
ならば、街道を進む筈だ。街道の先の丘にポルポ城がある。
作戦上、ポルポ城を先にとった方が有利に働く。だからユウトは急いだのだ。
ユウトは何とか紙一重でポルポ城に先に入り、旗をナルシス王国のモノを多数立てる。
少しでも人数が揃っていることをアピールする必要があった。
すると、サマーソルト王国軍は、半数が国に帰る準備をしていた。
スパイの活躍と、魔法王の牽制が役にたった様だ。
ユウトは仲間の軍を待ちながら、ポルポ城の外壁に、デカい石を配置していく。
その後、続々と味方軍が集まり、手伝い始めた。ユウトは忍の職業の兵士に命令を下す。
「ポルポ城を無視される可能性もある。
左右の木の上から、サマーソルト王国軍が現れたら、毒吹き矢を放て!!」
「は!! 王命しかと」
ユウトは用心深い性格ながら、うてる手は全てうつ。
「丘の下の草むらにマキビシをばら撒け!!
更には城の上部に弓兵と魔法士を置いて、
剣士達は手筈通り、合図を出したら石を転がせ...」
「前回の拳闘王国との戦争は遠出で終わったが、今回はそうはいかない!!
諸君なら、実戦と蹴りの試練に耐えられると、私が保証する。以上だ」
随分サマーソルト王国軍は、
随分兵を減らしているが、二万はいる筈だ。
ユウトはサマーソルト軍へ大声で叫ぶ。
「まともな実践経験すらしていない、サマーソルト王国軍よ!! 頭が高い!! 頭を下げよ!! 下等兵士どもが!!」
サマーソルト軍将軍のパッツン将軍は激昂した。
「所詮は新参王の分際で!! 全軍突撃!!」
平和に慣れた将校など単純でやりやすい。
すかさずユウトは赤の旗を挙げたのだった。
赤上げて、白上げて、白下げないで赤下げる。って遊びじゃないからな!!
ポルポ城へ更に誘引をしようじゃないか。
ジジが単体で現れた。見た目は可愛いうさぎで中身はあくまで、悪魔です。
ダジャレじゃないよ!
ジジには翼がある。本陣のパッツン将軍の所まで飛ぶと、パッツン将軍に魔法を繰り出す。
「ファイアードン」
パッツン将軍が炎と衝撃波で怪我を負う。
ジジは、お尻をペンペンして、ポルポ城に戻って行った。
パッツン将軍は大事な髪の毛をチリチリにされて更に憤慨している。
もう、ポルポ城を攻め落とす事しか考えていないようだ。
計略で二万まで減ったサマーソルト軍はポルポ城へ駆け上がるのだった。
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