第37話 神々の関係


 ユウトはふと天井から殺気を感じて、短剣を複数投げる。


 すると、血が天井から落ちて来た。

暗殺者達が観念したのか現れて襲ってくるが、ハープの仕込み刀で斬っては捨て、

斬っては捨てと、まるで瞬足の剣劇を見せてるが如く、綺麗に始末をした。


 最近やたらと暗殺者が多いのだ。

こちらも忍者や暗殺の職業の者を育ててはいるが、いかんせん数が多すぎる。


「暗殺者の事よりマキになんて説明をしよう...」


 ユウトは、妻マキにこの国の変化をどう説明しようか悩んでいた。


 一つ目はナルシス神様が降臨なされて、

国名が変わる事。

二つ目はナルシス神様が居城に常駐される事。三つ目は庭が薔薇で埋めつくされた事。


 もうすぐ第二子を産む妻に余り刺激を与えてはいけない。


 話すタイミングを考えていたら、

ナルシス神様は、マキの部屋に入っていく。


 おいおいおい!! 貴方は色んな意味で刺激強いから、ちょっと待って欲しい。


 ユウトも慌てて、マキの部屋に入ると、

ナルシス神様は例の挨拶を始めた。


「我が名はナルシス!! 三千世界の神の中で最大級の美に愛されし神の一柱である!! 

王妃よ!! これより我もこの居城で暮らす事になったが故に挨拶しに来たぞ!!」


 マキは、ポカーンとしている。

駄目だ!! ここは、俺がフォローしなければ! 


 ユウトは大きな紙束を用意して、

それに文字を書いて、

ナルシス神様の後ろから指示のカンペをだす。


「神の降臨の伝説は習ったか? 

それで来た神様らしい。

挨拶をお願いします」


 マキはユウトの紙を見て、思い出したらしく、丁寧に挨拶する。


「ナルシス神様からご挨拶しに来て頂き誠に感謝致します。私は身重の為に傅くことが出来ない事を平にご容赦くださいませ。

私がユウト王の妃のマキと申します。

この国を、民をよろしくお願い申し上げます」


 ユウトはナルシス神様の後ろからナイスのポーズを取る。


「はっはっはっは!! 何も問題ないぞ!! 

新しく産まれし子供は三千世界で一際輝きしこのナルシスの加護を受けて、

きっと美しく成長するであろう!! 

感謝するのだぞ!!」


 ユウトは更に紙に書いて、

指示のカンペを出す。


「この人うちの神様だから、機嫌を損ねず、ヨイショしておけbyエドガー国務卿より」


「ナルシス神様の御加護大変有り難く存じます。ところでナルシス神様が選ばれた経緯を教えて貰えますでしょうか? この土地は、自然豊かな場所以外に取り柄のない場所ですが...」


「それは、ユウト王がチャラ男でチャラい職業ばかり高レベルにして、民にナンパ塾を開いていたからである」


 マキの怖い目がユウトに突き刺さる。

ユウトは口笛を吹きながら、逆転の発想で、悪い情報を忘れさせる様な、

難題の指示のカンペを出す。


「ボケろ」


 マキは、ビックリした表情になった。

この状況下でどうボケればいいのか? 

マキは知恵を振り絞り、答えを探す。


「ーー流石ユウト王らしいですね。この国はユートピアになりそうです」


 すると、ナルシス神様は大笑いをして、

マキを褒め称える。


「ユウト王の妃は流石洒落が上手いではないか! 世界が皆、美を求め続ければ、

戦争など起きないのだよ! 

人類美化計画! 私はそれを強く願っている」


 ユウトは指示が楽しくなって来た。

更なる指示をマキに与える。


「はい! ここで、笑顔で肯定して」


 マキは不服そうではあるが、従ってくれる


「ーーまさにその通りですね。皆が美しさに心血を注げば、戦争など馬鹿らしくなりますね」


 ナルシス神様は大変笑顔である。

この国に来てよかったと言い残して、

マキの部屋を後にした。


 ユウトも大満足でマキの部屋を後にしようとして、案の上首根っこを掴まれて、

問いただされる。


「さっきのカンペ無茶ばかりじゃない!! しかも私が妊娠してる間に、ユウト貴方は変な施策ばかりしたから、頭のおかしな神様が来たんじゃないのかしら?」


「是非もなし」


「いや!貴方のせいでしょ〜〜ッ!!」


 今更この歳になり、生き方が変えられる筈などないのだよ! ユリウスやアダムみたいに妻を複数人持たないだけ偉いと思ってほしいものだ。


 チャラ男の耳に念仏とは正にこの事である。マキは諦めた顔になった。


 ユウト自身はナルシス神様は話が意外とわかる良い神なのではないかと感じる様になって来た。





 神々にも派閥はある。

・武闘派と呼ばれるのは、拳闘神、サマーソルジャー神、剣神

・技術派と呼ばれるのは、魔法神、商神

・自然派と呼ばれるのは、放牧神、花畑神

・生産派と呼ばれるのは、温野菜神、料理神

・宗教派と呼ばれるのは、聖神


 では、ナルシス神様はどこに分類されるのか。ナルシス神様は薔薇が大好きだから自然派であろう。


 神々にも派閥毎に好き嫌いはある。

自然派と生産派、技巧派と生産派が仲が良いように、

自然派と武闘派、武闘派と武闘派はあまり仲が良くなかった。







 〜〜???



「ーーナルシス王国が誕生したそうです」


「何!? あの自意識過剰ナルシスが国の神だと!? それは何かの冗談だろ?」

 

 男は呆れながら問いただすが返事がない。


「ーーーーーー」


 髭面でツルピカの頭をした二人は重苦しい雰囲気になっていた。


「すぐに、ナルシス王国を潰せ!! 

俺はナルシスが大嫌いなのだ! 

あの軽薄な奴の加護がこの大陸に働くとか虫唾が走るわ〜!」


 ナルシス王国に受難が迫ろうとしていた。





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