第36話 ナルシス神様


 突然の三千世界の神々の勅命にナルシス神の降臨! 国民達は、戸惑っていた。


 何故なら口伝では聞いた事があっても、

実際に目の当たりにするのは初めてであったからだ。


 ナルシス王国ーーつまり美の神様の加護が働く国。 という事は、今後産まれてくる男はチャラ男、女は遊び女になるのだろうか?

それとも読んで字の如く、自意識過剰な...


 ユウトの住まいし、居城からエドガー国務卿が出てきた。


「みんな! 

ナルシス神様が降臨なされた!! 

すぐに建国祭の準備に取り掛かれ!」

 

 国民達はいそいそと動き出した。





 夕方になり、いよいよ建国祭は始まろうとした時に、

壇上に銀色に輝きし美丈夫が現れた。


「ーーみんな〜僕の為に建国祭ありがとう! ここで僕から一つお願いがあるんだーー我が名はナルシス!! 三千世界において最高に輝く神である!! 我が名において命ずる!!みんな美しさに磨きをかけて!! この僕のように」


 ナルシス神様は薔薇を咥えながら、

変なポーズを決めた。


 ユウトは国民達に頭を下げながら、

壇上からナルシス神様を引き揚げさせる。


「ーーーーーーー」


 民達は何とも微妙な顔つきになって、

言葉が出てこないらしい。

頼むから俺のせいだと言わないでもらいたい。


 ユウトは国民達に申し訳ない気持ちで一杯になる。


 エドガー国務卿が拍手をしだすと、会場は拍手に包まれた。


 いよいよ建国祭の始まりである。

だが、何を祝えば良いのか全く謎であった。


 そんな中、ナルシス神様は手を叩く! 

すると、ユウトの居城の庭に咲いていたチューリップやひまわりなどの花が全て色取り取りの薔薇に変わる。


 何晒し飛んじゃ〜!! あれはマキが丹精込めて栽培していたから、怒られるの俺だぞ!! 

というツッコミを我慢して、

何故そうしたのかを聞いてみる。


 ナルシス神は笑いながら


「赤い薔薇の花言葉は情・熱!! 

私にピッタリだろ? 

更には薔薇は食べると体臭が爽やかになるんだよ! 私の住む城の庭に薔薇以外あり得ないよ」


 あんたの趣味かーい!! 

ナルシス王国はこれからどんな変な国になるのだろう? ーー少し想像したがヤバい! 

デイオブリビングチャラオ...


 更にはナルシス神は、薔薇の花型の飴細工や薔薇の花型チョコバナナ、更には薔薇の花型りんご飴まで作り出す。しまいには、


「ナルシス王国の国花は薔薇に決定するよ」


 と、勝手に宣言し出す。好き放題である。

しかし、エドガー国務卿は真剣だ。


「ナルシス神様のお言葉を聞いたかーーッ!! ナルシス神様の仰せのままにみんな従うように」


 エドガー国務卿にこっそり何でそんなに必死なのかきいてみた。


「神の仰る事は決して逆らっはなりません! 口伝では神の意思に背いた国は悉く滅んだと言います。ナルシス神様の言いつけには全て従うように!!」


 エドガー国務卿があんなに真剣なのだ。

ユウトも邪険にしてはならないと理解した。


 ナルシス神様は、軽快に建国祭を楽しんでくれた。楽器を弾いて歌を演奏するあたり、

悪い神には見えない。少し頭がおかしいくらいだ。充分許容範囲である。


 「しかし、ユウト王よ! 私が選ばれるのは随分苦労したぞ!! ユウト王は暗殺系の職業もカンストしているから、暗殺の神サスケも横槍を入れてきて煩かったんだ」


 できればサスケ神の方が戦力になるから嬉しいのだが...


「私に選ばれた国は実にラッキーである。

皆、綺麗になれるのだからな!」


 美の加護とか国の発展にどう使うんだよ!! 


「大変有り難く存じます」


 とにかくヨイショする他ない...

おい! プリーモよ! お前は薔薇を咥えなくて良いのだぞ! 


 この国は今後大丈夫だろうか?

ユウトは急激に不安になるのであった。

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