魔王を倒した勇者パーティは皆祖国から称賛され褒美を貰う中、吟遊詩人は祖国から罵倒され追放された。仕方ないので森で歌を嗜んでいたら何故か最強になった。今更祖国の危機で帰ってこい?もう遅いわ
第33話 過去編2後編(いつも側にいてくれた君へ)
第33話 過去編2後編(いつも側にいてくれた君へ)
ラストエビルを抜けたら最後は魔王城である。最後まで生き残ったのは最早、三パーティの十五人しか居なかった。
戦いもいよいよ佳境に突入した。
ユウトは司令官として厳しい選択をとる。
「勇者法度一条 自分の命を第一に考える事。
勇者法度五条 俺を置いて先に行けと言わない事。
勇者法度六条 敵と相討ちの自爆攻撃をしない事。
上記の法度は今をもって無効にする。
皆、世界の平和の為に死ぬ覚悟も決めてくれ」
突然の宣告に、皆ショックを隠せない。
しかし、ユウトは続ける。
「これより、ラストエビルへの道の先頭は、
私を含めた第三陣の予備部隊から進むーー魔王戦で勇者パーティに全力で戦える様にする為だ」
ラストエビルの道ーー草一つ生えない紫色の大地。魔物も全く出てこないそんな一本道である。
そんな道の先に、一際大きな悪魔が二体立ち塞がっていた。
ユウトは仲間全員にバフとHP徐々に回復の曲をかけて、臨戦態勢をとる。
「我の名前は魔王軍四天王ブルータル」
「我の名前は魔王軍四天王レッドタル」
『参る』
魔王軍四天王は名乗りを挙げたと同時に斬りかかってきた。
前衛の剣士二人ヒョウとレイは剣で押さえ込むが、ジリジリ押される。
ユウトは四天王にそれぞれデバフの曲を流し、後衛の魔法士からも魔法を撃たせる。
ようやくこちらのペースかと思った矢先に、四天王の二人は第二形態モードに進化し出した。
それは圧倒的な攻撃力で、すぐ様ブルータルはヒョウの心臓に剣を突き刺すと、
レッドタルも剣でレイの首を刎ねた。
すぐ様第二陣の前衛の剣士が先頭に立つ。
しかし、四天王の攻撃力をなかなか抑えられない。ユウトも前衛で剣を振るい、牽制する。
その間も魔法士がありったけ魔法を放つが、仕留めきれない。第三陣魔法士プルもMP切れでビル爺に変わる。
ビル爺もありったけの魔法を叩き込むが、なかなか四天王二人のHPは高いらしい。
次第に第二陣の剣士アランとフライも疲労が募る。
「諦めんじゃねーぞ〜」
ユウトは皆に声をかける。
しかし数ターン後、ふとした拍子にアランとフライは四天王の二人に胸を突き刺されて絶命してしまった。
前衛はユウト一人ーー絶対絶命のピンチである。
すると、MPの切れたビル爺は走り出した。
「ユウト〜〜!!世界の平和は任せたぞ〜〜ッ!!」
ビル爺はブルータルにしがみつくと禁断の呪文を放つ
「自爆」
すると、プルも意を決して走り出す。
「ユウトさん!! 後は頼みます!!」
プルもレッドタルにしがみつくと、
禁断の魔法を放つ
「自爆」
ブルータルもレッドタルも倒れた。
ユウトは涙を流しながら、五人の死を悲しんだ。しかし、それで終わりではなかったのだ。
ブルータルとレッドタルは最後の力を使い、あちらも自爆をした。
相手はユウトと勇者である。
咄嗟に駆けつけた、第三陣の賢者ピルと第二陣チアキ、忍者のサイ、暗殺者アンが巻き込まれて、爆死してしまう。
ユウトは狂乱状態でチアキにかけよる!!
「アイリス!!回復魔法を早く!!」
「チアキ〜!!チアキ〜ッ!!」
チアキは最期に一言
「大丈夫よ私はユウト貴方の中で生き...」
チアキは最期にユウトにキスすると、
息を引き取った。
ユウトは声にならない叫びで泣き散らした。
「チアキ〜俺なんかの為に何故庇った〜
みんなもごめん!! 俺の采配のせいで...」
憔悴しきったユウトへは死んだチアキと二人にしてあげた。
ユウトはチアキの鞄から日記を見つけた。
「○月○日
私は勇者パーティに選ばれた。世界の平和の為に頑張ります」
「○月○日
レベルアップやっと済んで、
今日から討伐隊の一員!
総司令官ユウトって人に挨拶に行った。
しかし寝ている。
毛布かけなきゃ風邪ひいちゃうよ!
そっと毛布をかけてあげる。
総司令官は皆の命を大事に思ってるらしい。
ずっと一人で作戦を練っている。
力になりたいな」
「○月○日
総司令官はどんだけ作戦を練っても、
死者は出てしまう。
その度に涙を流して悔いている。
彼は本気で皆の命を大事にしているのだなと思った。彼を支えてあげられる人はいないの?」
「○月○日
ユウトの事を思うと胸が熱くなります。これは...」
「○月○日
ユウトはチャラ男らしい...私はそれを聞くと胸が締め付けられそうになります。これはやはり恋なの?」
「○月○日
仲間がどんどん死んでいく。それだけ魔王軍も必死なのだ。私もいつ死ぬかわからない。
でも後悔する生き方はしたくない。
だから私は私の思いを伝えるよ」
「○月○日
ユウトも私を愛しているって!! やっと両思いになった!! 世界で一番幸せ!! えへへ...まだ死にたくないよ〜」
「チアキ〜〜ごめんな〜〜もっともっとも〜っと早く君の気持ちには気づいていたのに...
もっと愛してあげたかったよ〜〜ッ!!」
ユウトの嗚咽を混じった泣き声は二日に渡った
ユウトはチアキのブレスレットを手に取り、
形見にした。
「ーーチアキの想いは俺が必ず果たすから。だからーー俺の中で生きてくれ」
ユウトは泣きながらチアキを火葬した...
〜〜Fin
マキも慰霊碑に向かって静かに手を合わせた。
ユウトは泣きながら項垂れている。マキも途方もないユウトの過去を聞き、言葉がでない。
ユウトはこんなに傷つき、ボロボロになるまで、任務を遂行して、平和を勝ち取った。
しかし終わったと思った矢先に、
祖国に追放された。
一体どんな精神状態で、生き抜いて来れたのか...
「ーーーー」
「ーーチアキさん...私が貴方の分までユウトを幸せにします。ユウトの幸せを天国から祈ってくださいね」
マキはユウトを励ます為に、ユウトをお姫様抱っこして、家に持ち帰ってあげたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます