第18話 お正月は年賀状を書こう

 今年もそろそろ終わるのか。

なら年賀状でも書きますか。

雪が降り積り、

あたりは一面綺麗な銀世界である。


 ーーこんな寒い季節は、

甘酒を飲みながらゆっくりしよう。


 ユウトの修行効率は悪い。

怪我をせずに、

一人でモンスターを相手にしなければならないからだ。


 それでも一日に五組くらいのモンスター達なら、

時間をかけて仕留められるようになった。


 日々の努力の積み重ねが大事なのだよ!

ファーガソン君!

あ! ファーガソン君に会ってなかった!

大丈夫だよね?

まぁ大丈夫だと思おう。



 さてさて年賀状は、

温野菜王と遊び人アダムにアイリスにユリウスに書けば良いよね!


 まずは両親に書きなさいって?

両親や兄弟がいれば、

祖国に帰った時に真っ先に向かってますよ。


 ユウトは孤児である。

赤ん坊の時、

タンタン師匠の屋敷前に置かれており、

実質タンタン師匠に育てられた。


 だからユウトには、

拳闘士になる道しか幼い時にはなくて、

必死で訓練したものだ。


「儂の背中を見て育てよ」


 タンタン師匠の口癖だが、

私はあなたの頭の光り具合が、

気になって気になってしょうがなかった。


 えっ? 拳闘士になったら、

自動的に坊主っすか?

ちょっと勘弁してもらえませんかね?


 タンタン師匠の弟子達を見る。

皆見事な太陽だった。

くっ! 俺に選択権などないのか...


 嫌な過去を思い出した。

仕方ないので、

タンタン師匠にも年賀状を書こう。

一様親代わりだからな。


「新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

ユウトは元気に修行をしておりますよ。

最近新しい曲の踊りをマスターしました。

また魔法王国のクラブで踊りたいです。

えっ? 修行の成果ですか?

立派な猪さんを倒しました。

今夜は猪鍋ですよ。


ps ダークネスオブファイアって踊るとテンション上げ上げだよね↑ 」



 ハープでダークネスオブファイアを、

現在練習中である。

音楽家としては、

お気に入りの曲を弾けるようになりたい。


 しかし、クラブ曲には楽譜がない。

手探りで音を調べていかなくてはならないのだ。

音を調べながら、楽譜を自分で書く。

中々労力がいる作業だ。


 えっ? 修行に行かないのかって?

モンスターも大半がこの季節は冬眠する。


 後で農家を回ってお年玉ならぬ、

お年野菜を貰いに行こう。






 一ヵ月後年賀状のお返しが届く。

「新年おめでとう。

ユウト君やっほー! また修行始めたんだね。じゃあ温野菜王国からまた支援出すよ。

まだ魔王の残党ならいるかもだしね。

またいつでも遊びにいらっしゃい」


 温野菜王には感謝しっ放しだな。

いずれ何か有れば助けに行かなきゃ




「新年あけましておめでとうございます。

子供が産まれました。

立派な遊び人に成長させます。


ps俺はノマノマイエイの方が好きだよ。

今度聞いてみてよ」


 アダムお前に子供が出来たとか大丈夫か?

しかも遊び人に育ててどうすんだよ!

剣士に育てろよ!

遊び人アダムもうあいつ手遅れだわ





「新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

聖書の格言にこうあります。

ここを離れない。

ここを見限らない。

ここに踏みとどまる。


ユウトは私達の居なくなった後も、

魔王残党の討伐の為に、

かの地に残ったのですね。

世界の平和をユウトに任せます」


 アイリスは真面目だな!

ジョークの一つも書けと私は言いたい。

ツッコミ待ちですよ〜



「心の友よ! 新年あけましておめでとう。

子供が二十人産まれました。

皆可愛くてしかたないです。

私の様な立派な!

人間になるように育てるつもりです。


ps俺は天女が好きかな。

またクラブ行こうよ」


 いや多いわ! お前は何処ぞの皇帝か!

しかも誰が立派やねん!

ユリウスお前は産みすぎなんだよ!

しかもお前の様に子供育てたら、

チャラ男が増殖するだろ!





「新年あけましておめでとう。

ユウト貴様まだ生きておったか!!

儂が必ず貴様の性根を、

改心させてやるからな。

バリカンに震えるがよいわ!! 」


 うわぁ〜やっぱ師匠に、

年賀状出すんじゃ無かった。


 ちゃんと修行して、

バリカンという悪魔から逃げなければ。


 ユウトは決意を新たに、

雪解けの森へと修行再開して行った。

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