第17話 強者共が夢の跡


 ユウトはかつての仲間の、

安否確認の旅を終えて、

仲間達と切磋琢磨した、

自然公園の家に馬車を泊めた。


 夏の風物詩である、

風鈴だけがカラカラ鳴いている。


 自分だけが前を向けずに、

世界から取り残された感覚はあるが、

ユウトにとって他人に迷惑をかけずに、

定住出来る場所はここしか無かったのだ


 強者どもが夢の跡ーーまさにそんな場所である。


 一人で住むには広すぎる。

五年もの間数十人が、

問題なく暮らせる為に、

畑が設けられて折、自作もできるのだ。


 私の屋敷として重宝しましょう。

さぁお掃除の時間ですよ。

って俺しかいないか。


 国の要請で近隣に畑を営んでいた人は、

魔王討伐後も何人か定住している。

馬車を走らせれば、

少なくない数の農家の家が立っている。


 まぁ国に治める税がないから、

農家としては実りは良い。

だがその分魔物が彷徨く未開地である為、

何か有れば自衛しなければならない。


 まずはユウトが当分、

こちらでまた過ごす事になるから、

何か有れば相談して欲しいと伝えて、

代わりに食糧を恵んで貰おう。


 ーー世の中give &takeっていうからね。

ユウトはこの地に修行に来た訳であり、

農業をやるつもりは無かった。

村長のエドガーさんの家に明日向かおう。





 翌日、エドガーさん家を訪ねる。


 エドガーさんはユウトの顔を見ると、

びっくりしている。


「ユウトさん! まさか魔王が復活でもしたのかい? 」


 それなら普通アダムが挨拶に来ますよ!


「いえいえ! 実は祖国を追い出されてしまいまして、私にはココ以外行く充がなくて、

私もこの地で修行を再開しようと思っております。

また魔物の被害が有れば退治しますので、

食糧をまた皆様から少しずつ頂きたいのです」


「そいつは災難だったね。

まぁこの地の農家は皆大歓迎だよ。

魔物被害が出ても、

何も対策できなかったからね」


 エドガーさんは快く了承してくれて、

エドガーさんと二人で農家を回る。

皆ユウトが帰ってきてくれて嬉しい様だ。

沢山の野菜を貰った。


 肉は取れないらしい。

仕方ないから、ユウトが狩に行く事にした。


 魔王討伐が終わったおかげで、

一つの小さな集落が誕生したのだ。


 もしかしたら、

何十年後には国になっているかもしれない。

そうなれば誰が王をやるの?

ーー俺しかいないでしょ!

ユウトは一つの可能性を、

頭の片隅に入れて置く。


 とりあえずは修行である。

吟遊詩人、死奏家、暗殺者、賢者はLV80以上であるから、早めにカンストしたいものだ。


 ユウトは吟遊詩人のまま森に入る。

本当は死奏家や暗殺者の方が、

飛び道具を装備しやすいが、

やはり慣れ親しんだ吟遊詩人が一番、

自分の中でしっくり来た。


 今までは五人一組でレベル上げをしていたが、今日からは単独作戦である。

まずは早めにバフとHP徐々に回復の支援曲を流す。

いつ敵が出てくるか分からないからな!






 ある日森の中、熊さんに出会った。

花咲く森の道、熊さんに出会った。

熊さんの言うことにゃ ユウトを食べたいな

スタコラさっさっさのさー ユウトは逃げ出した


 って駄目だろ!

修行にならないから戦えユウト!


 実はあの熊さんことデッドリーベアーは、

かなり強いのである。

逃げつつ、飛び道具を投げて持久戦にする以外にない!


 なぜなら盾役いないからな!

俺が盾役したら、

誰が仕留め役やんねんって話だよ!


 ユウトは吹き矢で毒状態にして、

木の上に登っては、

クナイを投げて、

熊さんが木に登って来たら、

蜂蜜をあげて、食べてる隙に、

別の木に跳ぶを繰り返した。


 いや蜂蜜必要かね?


 怪我したら、狩にも修行にも行けないからね安全第一の為ですよ。


 倒すのに、実に一時間以上が掛かった。

盾役の重要性が再認識させられた瞬間である。


「今日のご飯は熊鍋だー」


 本日ユウトは無事、

晩御飯が確保出来たのだった。

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