第2話 かつての仲間達への戦勝報告
勇者パーティはようやく長く苦しい戦いの日々から終わりを告げた。
「はぁはぁ何とか魔王を倒したぞ」
アダムは肩で息をしながら床の上で大の字になる。
そんなアダムをファーガソンはまだ魔王城だから油断するなというがファーガソン自体も疲れている様子だ。
ユウトとユリウスは抱き合い背中を叩いて喜ぶ。
アイリスは神に祈りを捧げている。
そこに秋の夕暮れが差し込む西日が照らす。
気づけばもう夕方近くになっていたのだ。
勇者パーティ五人は次の日、魔王城の残党討伐をしながら魔王城を占拠して、
魔王城の旗を自分達の旗に変える。
魔王城を勇者パーティが完全掌握した証である。
ーー各国の物見に伝達され全世界が魔王討伐で湧き上がることだろう。
勇者パーティは転移して各地でお世話になった人々にお礼を言って回る。
皆涙を浮かべ良くやったと褒め称えてくれる。
中にはお土産までくれる人々までいる。
みな嬉しそうだ。この笑顔の為に頑張ってきた
それは伝説の勇者の防具を代々守っていた一族や
転職に必要なおばば様や勇者の聖剣のありかを教えてくれた村人に雪山で凍えそうになっていた勇者パーティを山小屋で泊めてくれた木こりの夫婦などなど数えきれない恩が各地に存在する。
過去を振り返るかの如く巡礼とも言える恩人達への報告ーーその最終地点は墓地であった。
勇者パーティは最初から今の五人であった訳ではない。打倒魔王を世界の国々が掲げて団結して、勇者の元に世界の国々から推薦された猛者が集まった。
総勢百名は居た。
仲間を庇い死んでしまったり、魔物の恐怖から逃げ出したが故郷に帰る前に行方不明になったり、魔物の攻撃で腕が上手く動かなくなってもそれを隠して最期は敵を一手に引きつけで自爆した者も数多くいる。
魔王も数多くの部下の命を散らせた様に勇者パーティも犠牲なくしては先へは進めない壮絶な総力戦であった。
落ち葉が墓の上に何枚か乗っている。
それは五年の月日を感じさせる。
死んでいった皆の名前がこの墓に刻まれていた。
この神殿の神官達が彫ってくれたのだろう。
最後まで残った勇者パーティの五人達は命を預けたかつての仲間の墓に花を添えた。
ーーみな大号泣である。遂にやったんだぞ!皆の命は決して無駄ではなかったと報告する。
鳥達は囀り祝福しているかのようだ。
最後はやっぱり墓の前で宴会だーー月見酒である。
酔っ払ったアイリスはしみじみ言い放つ
「ユリウスやユウトの様なろくでなしではなくて、しっかりした人格者が沢山居たのに彼らではなくこの二人が生き残ったのが不思議よ」
「そうだなみんな立派だった。俺なんかを助けて死にやがって! 俺はお前達に報いる事ができたか? 」
いつもはおふざけ担当のユウトも今日はシリアスモードである。墓を抱きしめて泣き出した。
無理もない。ユウトは勇者パーティの初期メンバーであった
ーー死んでいったみんなの事を知っている。
皆自慢の仲間だった。
ユウトは当初拳闘士で前衛であったが、
前衛が増えれば転職してパーティに足りない部分を補う為に、
様々な立ち位置になってきた。
しかし自分が前衛を譲ったせいで、
死んだ前衛の仲間も居た。
ならばと前衛を再開したら、守りきれず中衛や後衛のメンバーが死ぬ事もあった。
ユウトもユウトなりに試行錯誤を繰り返してパーティ全体の強さを考えてオールラウンダーになったのだが、
ユウトは勇者パーティ内でムードメーカー兼作戦を立てる立ち位置をしていた。
時には非情とも思える決断をした事もある。
ーーどんなに詫びても詫びきれない。
だか結果的には魔王を討伐できたのだ。
攻略本などない中、
最善とは言えなくても善処したはずだ。
ユウトは煽るように酒を呑み墓にも酒をかけてやる。
かつての仲間達はパレードで祝福されない分自分達が褒め称えてあげよう。
アダムはユウトを励ます。
「ユウトお前が良くやって来た事は俺は一番長く近くで見て来たからよく分かっている。
彼らの分まで生きてあげようーーそれもまた死んで言った者への罪滅ぼしだ」
昔話に盛り上がりながら長い夜はふけていき、墓の前で勇者パーティは夜を明かした。
各国の首都では勇者パーティが魔王を倒した報告が行き渡り皆涙を流して喜んだ。
こんなめでたい日はパレードしかないと世界中がお祭り騒ぎだ。
屋台が立ち並び街には飾りや横断幕が取り付けられて主役の凱旋に備えている。
特に顕著なのは生き残った勇者パーティの祖国である。その各国首脳は褒美に何が良いかまで話し合われている。
栄誉も地位も安泰であったはずだった。
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