第3話 祖国追放


 勇者パーティは各国首都のパレードでヒーローであった。

各国の王達もベタ褒めで皆ヒーローの様に扱われた。

歴史書のページにも五人書かれ、登場し語られていくことになる。


 そんなパレード行脚の旅は一か月以上にも上る。


 ユウトは心なしか地元の拳闘国が、

自分に冷たい様な感覚を覚えた。

気のせいだよな? 

転職したの怒ってないよな?


 一抹の不安感はあったが、パレードのスケジュールをこなすのに必死で気にしちゃいられない。


 そんな中最後のパレードは勇者アダムの地元であり、魔王を倒す為に世界に協力と同盟を持ちかけた大国の温野菜王国であった。


 久しぶりの故郷で更に有名になって帰って来たとあって勇者アダムは機嫌が良い。

地元民からは花束や特産品など数多くのプレゼントを貰っていた。


 これが終わったら俺達勇者パーティも解散して、各々それぞれの道がはじまるのだな。


 どんな事にも始まりがあれば終わりもある。ユウトは勇者パーティの日々は辛かったが愛着もあり、やり甲斐があった。

少しゆっくりしてこれからの事を考えよう。


 勇者パーティ一行は温野菜王国の王宮の広間に集まった。


「みんな聞いてくれ! ユウトは知ってると思うが残り三人には知らないから話しておくが、ここはかつて最初に勇者パーティを結成させた始まりの場所でもある。魔王を倒した今、もう勇者パーティは今日この時をもって解散する。

みんな本当にご苦労であった。

だが俺達の人生はまだまだ長い。

死んでいった仲間達の分も俺達は生きて幸せになろう。

俺達の今後の人生に幸あらん事をーー」


 皆握手を交わして抱擁してこの場を後にする。

もう彼らと同じ道を歩む事はないだろう。

しかし俺達は同じ目標に向けて走ってきた仲間だーーかつての輝かしい思い出は消える事はない。




 ユウトは地元拳闘国に単身帰る。

もちろん金髪でチャラチャラしてハープを片手に吟遊詩人のままである。


 すぐに王の使いがやって来た。

王宮はユウトをすぐさま召還したのだった。

褒美の言葉に爵位や金銀財宝を頂けると思っていたユウトに意外な言葉がかけられた。


「ユウトよ汝を追放処分とする。二度と我が国に入るべからず」


 はい? 一瞬王が何を言っていらっしゃるのかわからなかった。


「王よ! 私は王命に従って勇者パーティに入り五年もの歳月を魔王討伐に捧げてきました。更には魔王を倒しました。

それなのにあんまりではありませんか」


「拳闘国とは屈強な拳闘士を輩出する国である。

汝は魔王討伐だけでなく拳闘国の顔としての宣伝としての要素もあったが、

汝は拳闘士ですらなくなり

異国の文化にハマりふざけた職業に転職した。

我が国は非常に恥ずかしい思いをし続けて嘲笑され続けた。だから汝は追放である」


 ユウトは王宮を叩き出された。心外も甚だしい。

利用価値が無くなれば俺は首を切られて終わりかよなんて国だ!


 ユウトはすかさず拳闘士のかつての師匠であるタンタン師匠にどうしてこうなったのか聞きに行く。


 タンタン師匠はかつて拳闘国の筆頭騎士だった。


 この国の情勢や自分がこうなった経緯も詳しい筈だ。

なぜなら勇者パーティへユウトを推薦したのもタンタン師匠だったからだ。


「タンタン師匠ただいま戻りました」


 ユウトはタンタン師匠の運営する拳闘道場に足を踏み入れた。

それは五年前と何も変わっていなかった。

懐かしいものだ。

ーー小さな頃から拳闘士を目指してこの道場に通い詰めたのだった。


 タンタン師匠はユウトを見つめるとハサミを取り出して怒気を放ちながらこちらに近づく


「わしが折角拳闘士として、

勇者パーティに推薦してやったのに、

一体どうすればそんなチャラついた格好で戻ってくるのだ!

しかも王には変な奴を推薦したと怒られる始末だわ! この責任をどうとってくれるんだ?我が道場の恥さらしが!」


 タンタン師匠も師範達も血相を変えてハサミを持ちユウトに襲いかかる。

堪らずユウトは全速力で逃げ出した。


「はぁ? 俺はそもそも魔王討伐の為に派遣され、何とか転職で生き残る術を身につけて試行錯誤を繰り返してきたのだ。

魔王を倒したのにあんまりではないか」


 ユウトは路地裏で泣きながらうずくまった。



 そうか魔王が居なくなった今俺達勇者パーティは過剰な戦力でありお払い箱ということか

ユウトは故郷に自分の居場所はないのだなと悟り寂しく故郷を後にした。

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